「カッコ悪く足掻く主人公の姿に、監督自身の姿が重ねられている様な」洲崎パラダイス 赤信号 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
カッコ悪く足掻く主人公の姿に、監督自身の姿が重ねられている様な
川島雄三 監督による1956年製作の日本映画。配給:日活。
川島監督作視聴の第2弾。古い白黒映画ながら、作家性が満載でかなり気に入った。
今はほぼ完全に消えてしまった洲崎遊郭(江東区東陽町1丁目周辺に在ったらしい)、その入口にある飲み屋「千草」を舞台とする。
主人公は定職持たず稼ぎも無く冴えない青年三橋達也と、その恋人で元洲崎遊郭の娼婦新珠三千代。あの三橋達也が、去って行ってしまった恋人を探し回って路頭に倒れ込む。監督の心情反映か、世を拗ねた様で暗くイジイジとして嫉妬深くカッコ悪いのが、印象に残る。
飲み屋で雇われた新珠はラジオ店の店主河津清三郎に見染められ愛人となり神田に越すが、そこに飽き足りず、結局三橋の元に戻ってくる。三橋も勤めていた蕎麦屋で働く可憐な芦川いづみと世帯持つことを飲み屋女将は望むが,結局新珠を選ぶ。
別れたりくっついたり男女の腐れ縁を描いていて,何処かフランス映画風。主人公に、撮影所前の食堂に入り浸りそこの娘と縁談話が持ち上がったが断わり、家を持たず行きつけの宿を家替わりに泊まり歩いていて小料理屋で働く女性に惚れこみ同棲したという川島監督の姿が重なる。
監督川島雄三、脚色井手俊郎、 寺田信義、原作芝木好子『洲崎パラダイス』、製作坂上静翁、撮影高村倉太郎、美術中村公彦、音楽真鍋理一郎、録音橋本文雄、照明大西美津男、助監督今村昌平。
出演 新珠三千代蔦枝、三橋達也義治、轟夕起子お徳、植村謙二郎伝七、平沼徹和男、
松本薫良男、芦川いづみ玉子、牧真介信夫、津田朝子初江、河津清三郎落合、加藤義朗落合の店員、冬木京三そば屋の主人、小沢昭一三吉、田中筆子廓の四十女、山田禅一大工風の男、菊野明子女、桂典子女中志願の女、加藤温子バスの車掌、隅田恵子伝七の女。