「他者への「恐怖」の行く末」新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に ぴこさんの映画レビュー(感想・評価)
他者への「恐怖」の行く末
1997年の夏に公開された2作品が、奇しくも同じタイミングでスクリーンに蘇ったということで、当時生まれさえしていなかった私はもののけ姫と同日にこの作品を鑑賞した。
映画館での鑑賞は実は2回目である。1回目は感受性豊かな高校生のときで、「終劇」の2文字が出てからしばらく動けなくなってしまった体験を鮮明に覚えている。
生々しく描かれる生と性、他者と触れ合うことによってできる心の傷の見せ合い、甘き死よ来たれをバックに流れる鮮烈なフラッシュカット…人間が持てる最大限の負の感情をこれでもかと劇場という逃げ場のない密室で突きつけられ、脳に刻まれる。
人間誰しもが内に持っている、他人への恐怖。でもその恐怖が他者を他者として認識し、その他者と歩んでいく為の礎となっているのも事実である。
あの時と同じく、上映後呆然となり、しばらく動けなくなった。あの思春期から感受性はちっとも変わっていなかったようだ。感情を暴力として行使されるとこうなってしまうのだろうか。でも、この強烈な感覚も、命をかけて作品を作ってくれた「他者」がいるからこそ味わえる。人類補完計画が失敗してくれて、良かった。
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