「まごころって何?」THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に ate2さんの映画レビュー(感想・評価)
まごころって何?
ラストシーン、シンジはアスカに恐怖して首を絞めたというけれど、そうは見えない。
あれはシンジの意思表示ではないか?自分は嫌われ憎まれてもいい。相手も自分もわかり合えやしない。いつまでも生きながら死んだ様になっているアスカに、ただなにもできず受け身でいるより、どんな罰や後悔が待っていようとも、変化を求めて行動した。
相手の反応を求め、自分の意思で考えて、意を決して行動した、絶望的なコミュニケーション。
その諦めと絶望に死者同然だったアスカの右腕が反応する。
絶望だけが絶望した心を揺り動かせる。虚無な心の共有は友愛を生む。
一切利害のないところにすら友愛がある。それが人間で、シンジが戻ってきたのもその心があるから。自分には何もできず冷たく醜いと思い、それでも生きていこうとして行動したことの結果の意外さに、彼の魂からの嗚咽が漏れだす。
誰でも一度くらい似たことは無いだろうか。自分が知るより深く自分を見つめる他者の心への感動。シンジにもその瞬間が訪れた。
もう死者の表情でなくなったアスカ。感慨深げな表情。そしてシンジとの認識のズレ。シンジの行動は孤独な自分の心と通じる。でも、わかり合えはしない。
一つだけの目が動く。目の前のシンジという他者。その恐ろしく、醜い存在と、ほんの少し前の自分とは心が一つになった気がした。だから、
「気持ち悪い」
これが作者が描きだした、真心。利害も事情も感情すらもなくしても通じ合う人間の心はたしかにあるということ。たとえ分かり合えなくても。
首を絞めた碇シンジは作者そのもの。だとしたら、それに対して、視聴者である自分はどう応えられるだろうか?心の芯で、反応しているだろうか?
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