「凄惨で滑稽な男たちの群像!」仁義なき戦い しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
凄惨で滑稽な男たちの群像!
"仁義なき戦い" シリーズ第1作。
Blu-rayで2回目の鑑賞。
原作は未読。
第一次広島抗争を背景に、やくざの血で血を洗う凄惨な戦いを徹底的なドキュメント・タッチと壮絶なバイオレンスで描いた「東映実録路線」のはじまりにして、輝かしい金字塔。
高度経済成長が行きつくところまで行きついた頃、戦後日本が一気に駆け抜けた時間を総括する気運が高まっていたのでしょう。本作が生まれたのは必然だったのかもしれません。
喰うか喰われるかの世界で生きる男たちの繰り広げる人間ドラマは凶悪だし陰惨極まるものばかりではありましたが、同時にものすごく人間らしいものでもあるな、と…
描かれる抗争の描写は現在のアクション映画みたいな洗練されたものでは無く、死物狂いで殺し合う命の取り合いに相応しいもので、とても泥臭く、どこか滑稽味がありました。
そこら中を転がり回りのたうち回りもがき苦しみ、応戦する者もいれば必死に逃げ惑う者もいる。それぞれの模様がめちゃくちゃリアリティーに溢れ、凄惨さに拍車を掛ける。
やくざ同士のパワーゲームにハラハラさせられました。殺るか殺られるか、一進一退の駆け引きがめちゃくちゃ面白い。
やくざ社会で成り上がろうとあの手この手。滅びる者もいれば、敵や味方を利用して潜り抜ける世渡り上手がいたり…
多種多様な人間模様が重層的に描き込まれ、圧倒的な大河のように荒々しい物語が展開されていて引き込まれました。
組織を描いた作品として観た場合、現代社会に通じる場面が多く、自分が身を置く組織に置き換えて観ると発見があるのが面白い。やくざ映画と云うジャンルの範疇を越えて今でも熱狂的なファンがたくさんいることも納得出来ます。
本作みたいにギラギラした映画を最近は見掛けません。やくざが登場する作品はたくさんありますが、どこかカッコ良さがあって、人間臭さが無いなとつくづく感じます。
自主規制やコンプライアンスの厳しい時代を迎え、このような映画がつくり難くなっている現状だから致し方無いのかもしれませんが、この熱狂を浴びたいとも思うのです。
[余談1]
マイ・フェイバリット・キャラは山守組長。手下に担がれる「神輿」でありながらちゃんと手綱は握っていると云う、したたかで君主としての器も持ち合わせている不気味な存在であるところに底知れぬ怖さを感じ、コミカルなキャラも合わせて魅了されました。稀に見るクソ野郎なれど、そんなヤツだからこそ混迷するやくざ社会を上手く泳いでいく。こう云うのが結局最後まで生き残るのは実際によく聞く話だし、このシリーズが描いているのは人間社会の縮図なんだなと納得しました。
[余談2]
本シリーズに出演していた俳優さんたちの多くが近年立て続けに鬼籍に入られていることを、大変悲しく思います。
[以降の鑑賞記録]
2019/06/29:Blu-ray
2021/01/07:Blu-ray
2024/02/04:Amazon Prime Video(4Kデジタルリマスター版)
※修正(2023/07/25)
コメントありがとうございます。
金子信雄氏の演技が絶品で素晴らしい存在感ですよねぇ…
私はムック本などを何冊か読んだことがありますが、もっとこのシリーズを好きになりました。
山守さんて金子信雄さんですかねぇ。悪い弱い奴ほど全シリーズ通じて不死身!たぶん不死身なのは菅原文太兄貴と金子信雄さんだけです。松方弘樹も一回死んで、別キャラで復活のはず・・確かにギラギラした作品でしたが、キチンと【生き残る奴は狡猾な弱っちい卑怯者】と言う道理を示してました。私はVHSレンタル鑑賞組ですが。制作当時は本物の暴力団にも話、通してたと思います。コンプラなんてない時代 芸能界とヤクザは表裏一体の時代でした。【私はレンタルに加え、特集本平成後期出版 観てますが、レビューはあげてません。すみません🙇】
syu32氏🙇
…北大路さん主演のドラマで「三匹のおやじ」ってありましたが…小林旭と千葉真一(仁義なき…御存命の方々)でやってくれないかなぁ?…って夢想します😅
同様に…「七人の侍」とか黒澤作品もね、仲代さんぐらいですか?…そんな仲代さん主演の新作時代劇「帰郷」(良さげです)が来年公開です…詳しくは映画.comで…🙏
syu32氏🙇追悼ばかりの令和元年でした🙏
梅宮さんが逝かれて……昨年、川地さん。その前は三上さんと…実質、第1部の初代山守組…田中さん(引退?療養中?)のみ御存命となりました…🙏