「スピードを落とすと作動する爆弾を新幹線に設置するという犯人Gというアイデアは、実に秀逸」新幹線大爆破(1975) Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
スピードを落とすと作動する爆弾を新幹線に設置するという犯人Gというアイデアは、実に秀逸
佐藤純彌 監督による1975年製作(152分)の日本映画。配給:東映、劇場公開日:1975年7月5日。
1994年の「スピード」を見てその面白さに感心し、異論もあるが元ネタとも言われているこの映画に辿り着く。
高倉健が、潰れた工場社長の犯人役で主演。共犯者が学生運動家くずれの山本圭。世界で持て囃されたこの映画の原案は、加藤阿礼(元東映常務坂上順のペンネーム)であるとか。
自分もリアルに見た1978年の『野生の証明』の佐藤純彌監督と主演高倉健の名コンビは、成程ここで確立したのかと思えた。
いつでもどこでも「健さん」と、一般に不器用な俳優とみなされている様に感じるが、ほぼ出ずっぱりで、元工場社長で、知力高い重大犯罪の主犯でありながら、見ている観客に共感を得つづけるという難易度の極めて高いヒーロー像を具現化していて、凄い俳優じゃん!と思わされた。
実は知的な演技プランがベースにしっかりとある俳優ではないか?昔の高倉健主演の映画をあらためて、真面目に見たいと思わされた。
ストーリーもなかなかにリアルで、興味深かった。政府は、新幹線に設置された爆弾の解除が困難な場合、周辺を巻き込み被害が大きくなる北九州地帯ではなく、山口県の田園地帯で爆破する(乗客のみの死亡にとどめる)よう国鉄総裁に命令する。
一箇所の爆弾除去後、写真分析からもう1か所爆弾がある可能性があったものの、山口県内で列車停止が命じられる。運良く、爆発は無く乗務員と乗客は無事であった。
警察は犯人を捕まえるために、爆弾解除成功のニュースをテレビに流さず、家族等の心痛は無視し、解除の方法を教えろと呼びかける放送を続ける、等。
最後、海外脱出を目指してやってきた空港の敷地内で、離陸する航空機を前にして、ライトに照らされて高倉健が警官に殺されるシーンは、とてもエモーシャナルな映像。米国ニュー・シネマ的でもあり、権力と闘って敗れ去った70年代を象徴している様にも感じ、心に響くものがあった。
日本を舞台にした映画も撮っているマイケル・マン監督「HEAT」におけるロバート・デ・ニーロの最後は、言われている様に、確かに類似。この映画へのオマージュなのだろうか?
監督佐藤純彌、原案加藤阿礼、脚本小野竜之助、 佐藤純彌、企画天尾完次 、坂上順、撮影飯村雅彦、 山沢義一、 清水政郎、録音井上賢三、照明川崎保之丞、 梅谷茂、美術中村修一郎 、桑名忠之、装置畠山耕一、装飾米沢一弘、美粧住吉久良蔵、美容宮島孝子、衣装河合啓一、編集田中修、音楽青山八郎、監督補佐岡本明久、特殊撮影小西昌三、 成田亨 、郡司製作所、記録勝原繁子、擬斗協力日尾孝司、スチール加藤光男、進行主任東一盛、演技事務山田光男。
出演
沖田哲男高倉健、青木ひかり運転士千葉真一、古賀勝山本圭、大城浩織田あきら、菊池鉄道公安官竜雷太、古賀の兄田中邦衛、藤尾信次郷えい治、佐藤刑事川地民夫、靖子宇津宮雅代、秋山藤田弓子、レジの女藤浩子、歌手松平純子、スカンジナビア航空係多岐川裕美、東京駅交換嬢志穂美悦子、千田刑事青木義朗、工事車運転士千葉治郎、三宅新幹線技師長原田清人、南矢野宣、小宮列車指令松野健一、広田特捜係長久富惟晴、哲ちゃん中井啓輔、松原刑事近藤宏、靖子の母風見章子、平尾和子田坂都、女性乗客十勝花子、アパートの管理人横山あきお、中やん林ゆたか、東郷あきら岩城滉一、森本運転士小林稔侍、堤刑事田中浩、佐々木刑事田島義文、高沢運転車輛部長山本清、田代車掌長福田豊土、国鉄総裁志村喬、内閣官房長官山内明、宮下公安本部長渡辺文雄、新幹線総局長永井智雄、花村捜査課長鈴木瑞穂
刑事北大路欣也、須永刑事部長丹波哲郎、倉持運転指令長。