「アップテンポで突っ走る、スリリングなストーリー。国鉄の協力不要!忖度不要!作りたい映画は作る!」新幹線大爆破(1975) ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
アップテンポで突っ走る、スリリングなストーリー。国鉄の協力不要!忖度不要!作りたい映画は作る!
先日、リブート版が配信された作品の原作、オリジナル版。
昔、名画座でフランス語版を鑑賞、DVD購入して鑑賞。
そしてこの度、丸の内東映閉館に伴う「 昭和100年映画祭」で再鑑賞しましたが、面白かった!
終映後は、観客から拍手喝采でした!
「日本映画では非常にめずらしい」と毎回言うのも悲しいですが、とにかくアップテンポで突っ走る、スリリングなストーリー。
犯罪ものなので、犯人グループ、国鉄、警察、運転手、のやり取り、乗客たちのパニックと手に汗握る展開です。
そして、ちょい役も含めて豪華オールスターの出演、もちろん鉄道ネタもあり、国鉄に断られてオールセットで撮った新幹線、など見所満載です。
一時期、スーパー戦隊など東映特撮物に頻繁に流用された、今では貴重な新幹線のミニチュア特撮シーンも必見。
それでいて、人間ドラマ部分も疎かにされておらず、犯人側の高倉健などには感情移入してしまいます。
同時期に同じく新幹線をテーマにした東宝の犯罪映画「動脈列島」(田宮二郎VS近藤正臣)が公開され、東映VS東宝お新幹線対決があったのですが、そちらは「新幹線公害問題」を扱った社会派犯罪映画。
見比べるにはあまりにタイプが違いますが、「娯楽作」としての面白さの差は歴然です。
「動脈列島」のほうではミニチュア特撮の要素は一切無し。
通常映像をスロー再生で新幹線が止まったように見せるくらいしかしてなかったと思います。(若い頃の単純な頭に合わず面白くなかった記憶のみなので見直す気力はなくうろ覚え…間違ってたらすみません。)
不謹慎にも「大爆破」という言葉にワクワク感を感じてしまう。
細かい突っ込みは、この際どうでもいい!
いや、むしろ魅力の一部でもあると思えるのが、イイ映画、面白い映画だと思います。
再見して思ったポイントなどについて。
本作にあるある突っ込みポイントが2点あります。
1つ目は、通りかかる柔道部員!
2つ目は、喫茶店が偶然火事!
ですが、これらは、話の重要なアクセントでもあります。
どちらもご都合主義と言うよりは、「完全犯罪で起きる偶然のアキシデント」。
話がうまくいきすぎないための要素でした。
今回気付いた意外だった点。
パニック物などのお約束で、乗客の中に妊婦がいて無事出産、緊張感の中みんなが和んでちょっと感動。
という超お約束か、と思えば違う展開!!
乗客の中のお医者さん(しかもわざわざ、手慣れていそうな女医さん)の登場で安心させておいてから、落とすところがまた憎い。
これが終盤の宇津井健が犯人に「乗客には妊婦もいる」と訴えることにつながる。
しかも、その時点では子供は亡くなっているのに。
いつもなら安心の藤田弓子なのに!
ちなみに、乗車時に怒ってる田坂都が、まだ若くて可愛らしい。
当時は、「ちゃちいミニチュア特撮っ!これだから東映は・・・」ってバカにしてましたが、今の目で見ると結構頑張ってる、逆にリアルに見えるカットもあると思えるから不思議。
「敢えてミニチュアの魅力」と思える。
この特撮が無ければ、「砂の器」などのような、ただの優れた名作サスペンス映画と思ってたかも。
本作の魅力として重要な要素になってると思う。
さらに、国鉄が非協力でも、余計な忖度不要!撮りたい映画は撮る!作りたい映画のタイトルは変えん!
というところに映画屋の衿持を感じる!
さらに国鉄側の終盤での対応について。
災害の少ない地点で爆破させる計画(新作でもありました)や、犯人逮捕のため事件解決の公表を遅らせること、などは、今考えると客観的に見れば当然とも思えます。
このくだりでの宇津井健の演技がイイ。
彼自身の実直なキャラクターイメージが最大限に生かされていました。