劇場公開日 1975年7月5日

「日本人の哀愁が核の作品、なのです」新幹線大爆破(1975) こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本人の哀愁が核の作品、なのです

2009年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

当時の国鉄の協力をまったく得られず、むしろ「別モノにしろ!」とまで言われたこともあって、とても新幹線の運転室とは思えない簡素すぎるコックピット、いざ懐かしいゼロ系新幹線が登場したかと思ったら、プラレールみたいなひかり号が出てきたり、と鉄道の映画でありながら、ちっとも鉄道の魅力がない、パニックサスペンスという作品なので、今の映画ファンにはあのり求められていない作品。ですが...

何度も見た私が感じる、この作品の魅力は、犯人の三人が社会の落ちこぼれ、という設定だ。ひとりは家族や大会社に見捨てられた零細下請け工場の経営者、ひとりは学生運動から革命戦士になりそこねた活動家、ひとりは完全な社会のはみ出し者、といった三人が、結託して日本の国家にまで挑戦しようとして、結果敗北してしまう哀れさが、何ともいえない哀愁が漂っているところを、この作品をこれから見る人には見逃さないでほしい、と思う。この犯人三人は、高度経済成長が終わったあとにとり残された、当時はどこにでもいた日本人なのだから、70年代の日本そのものが描かれている、という点は興味をひくものだと思う。

 そしてこの作品、JR東海だったら昔の国鉄より協力的になるような気がするので、ぜひ日本の映画会社でリメイクしてほしい、と思う。ただ、サスペンスの部分が同じ設定だったら、逆に「スピード」を真似してる、と言われそうなので、ハッカーで中央制御室がゲットされた、みたいな今どきのものにしたほうがいいだろう。それに、今の新幹線はもっとスピードがあるのだから、パニック映画にもなりやすい、と思うのだけど...。考えてくれる映画会社はないのだろうか。

こもねこ