昭和残侠伝のレビュー・感想・評価
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耐えて耐えて、暴発のカタルシス
"昭和残侠伝" シリーズ第1作。
マガジンの付録DVDで鑑賞。
仁義を体現する清次を演じた高倉健氏の演技が沁みる。客分の風間に扮した池部良氏の佇まいもカッコ良かった。
任侠の世界に身を置く男が敵対する組の嫌がらせに我慢を重ねるも、あまりの非道の末ついに堪忍袋の緒が切れる。
任侠映画のテンプレートなストーリーながら、男や女の情念が良い味つけになっていて、ストーリーに引き込まれた。
耐えに耐え抜いた末の殴り込みにこめられた怒りが、見事なカタルシスを生み出しているところが素晴らしい。
だが痛快一辺倒で無いのもまた良い。激情の後の虚無感と云うか、漂う物悲しさがなんとも言えぬ余韻を残す。
[以降の鑑賞記録]
2022/12/02:YouTube(東映シアターオンライン)
※修正(2025/05/25)
気概
仁侠のなんたるかは知らない。
所詮ヤクザ者と思ってたけど…大幅に違う。今のご時世とは相容れないものばかりだけれど、胸にくるモノはある。
ドラマなので多大に美化される部分はあると…いや、最早事実無根でもいいのかもしれないが根っこが語る事には共感できる。
主演・高倉健演じるところの清次は、自分以外のものを大切にしてきた。
恩義やら戒めやら、誰かの幸せやら。
現代は我欲が何より優先される時代なのだと思う。清次のような人間はいいように使われて捨てられるだけなのだとも思う。
でも、なんだろうか…でき得るなら、あんな価値観を持って生きていきたいと思う。
自己犠牲なんて言葉があるけど、それとはまた違う。人としての本質を裏切れないような感じだった。
この作品が仁侠映画として何作目なのか知らないが、随分と淘汰というか整頓というか精錬というか…作品としては分かりやすい。
単純な構造といってもいい。
起承転結がしっかりあって、時間が前後する事もない。仁侠映画なんて銘打っちゃいるが、サイドストーリーを含め描かれる人間模様はシェークスピアにも匹敵する。
分かっちゃいたけど、カメラも動かないし、1カットも長い。
ただ、退屈かと聞かれればそんな事は全くなく、シンプルな分、俳優の心情が克明に映し出されるようであった。
それ故に印象深いシーンも多い。
親分が子分の為に頭を下げるシーンとか、それ以降の難癖を突っ撥ねるとことか。
病床の妹に「過ぎたもんは仕方ねえから、今は元気だせ」とか。
理不尽な相手にもまずは非礼を詫びる事とか。
愛した女性の幸せを願い話す言葉とか。
本来、こおいうものなのだろうなぁと思う部分がいっぱいある。
現代はどこかやっぱり歪んでると思う。
清次に敵対する愚連隊たちの方に現代社会を投影してしまう。
…ゾッとする。
物語は楽しめたのだけど、殺陣がデタラメ過ぎて最後に萎えた。
後、若かりし頃の松方弘樹さんが…超絶にイケメン。今の俳優の誰が並んでも霞むくらいだった。
昔の2枚目って男も女も群を抜いてる。
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