「雲のち晴れ」首都消失 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
雲のち晴れ
1970年代~80年代に多く作られた東宝特撮SF/パニックの一本。
1987年の作品で、時期的に後期作。
原作は、火付け役『日本沈没』の小松左京。
高さ約2キロ、半径約30キロ。
突如、謎の巨大な“雲”に覆われた首都圏。
調査隊が編成され、中に閉じ込められた2000万余の人々を救出しようと奔走する…。
“物体O”と名付けられた謎の巨大雲。
外側からの手出しは完全シャットアウト。
電磁波も狂う。
銃弾はスパークして跳ね返り、飛行機は爆発、墜落。
その中は…、落雷、エネルギー波の地獄絵図。
“雲”は広がり、飲み込まれたビルは破壊される。
まるで怪獣。
ドライアイス、スモーク、ガスなどを用いた中野昭慶による特撮演出はさすがのもの。
その中野特撮演出が冴え、異様ではあるが、幻想的。
SFパニックだが、“シミュレーション映画”でもある。
もし、首都圏の機能が麻痺したら…?
政治、経済、外交…。
いかに全ての中枢を首都圏に置いているか、そこを突かれた時の日本の弱点。
ドラマ自体は大人向け。
渡瀬恒彦、名取裕子らのキャスティングがアダルトなムードを醸し出す。
お互い“雲”の中に家族が居ながら、明らかに内心惹かれ合ってるのはご愛嬌。
“雲”に挑む人々の奮闘、報道や政府の観点から描くのはいいが、時々“?”なシーンも。
料亭でお食事。…ま、休息も必要。
若者たちの野外コンサート。…ま、“雲”の中の人々へ歌うという気持ちは分からんでもないが、何かダサい…。
音楽はモーリス・ジャール! 贅沢な起用だが、OPの陽気な音楽が作品に合ってない…。
リアルに描いているかと思いきや、メーサー戦車みたいなメカニックも登場し、リアルなのかSFなのか…。
時々チープな演出も目立ち、ラストは呆気ない。雲はいずれ晴れるけどさ…。
まあでも、この一連のジャンルの中では割と好きな方。
謎の怪現象と、それに立ち向かう人々。
その構図がまるで、『ウルトラQ』みたいで!