「元ネタを踏襲しつつ新たな要素を盛り込んだ内容」12人の優しい日本人 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
元ネタを踏襲しつつ新たな要素を盛り込んだ内容
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元ネタとなった「十二人の怒れる男」を先日観て感動し、パロディ作品として作成された今作も期待して観ました。
非常に面白い作品ですが、元ネタである「怒れる男」と比べると前半のテンポが悪く、しかも無罪を主張する陪審員4番のおじさんと10番のおばさんがかなり無能に描かれていてストレスが溜まります。無罪を主張する理由も「なんとなく」とか「被害者は殺されて当然だから」とか、全く筋が通っていません。
元ネタとなった「怒れる男」ではスラム出身の少年に対する偏見で有罪とする陪審員もいましたが、そういう人達でも目撃証言や少年の証言の曖昧さなどを挙げて筋の通った議論がされていました。「優しい日本人」の前半部分にはそういった筋の通った議論は一切ありません。上映が30年近く前だからか、現代ではあり得ない女性蔑視や美醜差別のような描写も多くあり、「怒れる男」の差別描写を真似したのかもしれませんが、私には不快に思えました。
しかし後半の展開は見事で、有罪に傾いていた場の空気が一変し、話は無罪へと進んでいきます。「怒れる男」は証拠品や証言が後出しで出てくることも多かったのですが、「優しい日本人」は物語終盤までに出て来た証拠品や証言でラストの無罪までの筋道がたつので、そこが元ネタを超えている部分かと思いました。
序盤は正義に思えた有罪派の陪審員2番が、実は一番個人的感情で動いていたというのが衝撃的でした。
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