獣人雪男のレビュー・感想・評価
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特撮ファンが、観れないからこそ観たくなる作品というのが妥当な評価だと思います
1955年8月公開、東宝、白黒作品
製作は田中友幸
本編監督は本多猪四郎
特撮は円谷英二
主演は宝田明
ヒロインは河内桃子
音楽こそ伊福部昭ではありませんが、ほとんど正統なる東宝特撮映画の構えです
同年4月公開の「ゴジラの逆襲」の次の特撮映画でした
怪獣映画の系譜というより、どちらかというと1954年の「透明人間」、1958年の「美女と液体人間」の間に位置付けられる映画だと思います
巨大生物の驚異ではなく、ほぼ等身大の謎の生き物の登場とそれを取り巻く人間ドラマなのですから
それなのに黒歴史
ソフト化も配信もなし
まともに観賞できる機会は今ではほとんどありません
ごく稀に劇場で公開されることがあるという程度です
理由は今で言うところのコンプライアンス問題です
恐らくは山の部落の登場が問題視されているのだと思われます
舞台が日本だから問題視された?
ならば舞台がヒマラヤだったなら良いの?
雪男でなくて南海の孤島で巨大な猿を生け捕りする話だったなら、島の原住民は良いの?
それらがコンプラ的に問題なくて、本作は問題になるのでしょうか?
不思議なことです
座頭市では差別用語がそのまま台詞で使われたままソフト化されています
なにかおかしなことです
そろそろ見直して断り書きを入れるなどしてソフト化されても良いのではないでしょうか?
本編は日本アルプスで長期ロケをしただけのことはある映像が撮れています
とは言え、あまり面白い映画でもなくスカッともしません
特撮もさすが円谷英二というようなものはありません
そもそもなんの発展性もない企画だということです
なのでどうしても観なくてはならない作品とは言い難いです
特撮ファンが、観れないからこそ観たくなる作品というのが妥当な評価だと思います
とある山岳部と学者が語る夢幻の体験談... 山奥の秘境に生きる部落民と彼らが崇める獣人のユートピアは俗世との好奇心の相克ゆえに瓦解する...
あのレジェンド作品である初代『ゴジラ』、そして『透明人間』『ゴジラの逆襲』に続く、戦後の東宝特撮第4作ということでネームバリューは十分なものの「表現上の諸問題」を理由にソフト化されず特撮関連書籍からもその存在を抹消されている問題作。
件の獣人雪男のサイズがせいぜい2,3mぐらいなので怪獣映画としてはスケールの面で不適格ではありますが、一方でビジュアル的に被りそうな『キングコング』とは明確に差別化された画作りとなっており、さらには"生存者が後に証言者として事件の顛末を語る"という構図は後の『マタンゴ』にも通づるようなプロットながらも相手がいわゆるUMAゆえに民俗学的な雰囲気も漂い、数ある東宝特撮映画の中でも怪獣映画でもなく変身人間ものでもない異彩を放っている作品でした。
巨大生物でも異形の人間でもない人の亜種、という特異な題材を用いつつも独自の特撮の見どころを盛り込みつつ、滅びゆくマイノリティーの悲哀も描いたなかなかの意欲作でした。
しかしながらも上述の通り、異文化交流の相克と相互理解の難しさが中途半端になり、特に後半はチカを演じる根岸明美さんの妖艶なおみ足という即物的な見せ場の確保に走ってしまったのは拙速に感じつつも、一方でなるほどこの時期の娯楽映画ならでは、とも感じてしまいました。
手軽に家では視聴できないものの、人気作だけに各地の名画座でちょくちょく上映の機会は有るので、気になった方はアンテナを張っておいていただけるとよろしいかと思います。
嗚呼無残!秘境に木霊す悲痛な叫び!
"超大怪獣大特撮大全集2020 PART.1―2月" で鑑賞。
原作は未読です。
内容に部落差別問題が含まれていることからソフト化されていない(サウンド・トラックは発売されている)本作を観ることが出来て感無量です。京都みなみ会館…神様かよ!
1分1秒観逃すまいと目を見開いていました。
それはさておき、怪奇とロマンに溢れた世界観に釘付けになりました。消えた山岳部員、未知の生物の痕跡、秘境の集落に暮らす人々、謎の美女…やがて姿を現した雪男の恐怖!
手に汗握りました。確かに差別表現は目に余るものがありましたが、内包されているテーマが物悲しく、めちゃくちゃ胸に迫って来ました。文明のエゴ、自然軽視…色褪せてない。
唯一の同族を殺害され、怒り狂う雪男…
その矛先は下手人の悪徳動物ブローカーだけに留まらず、彼を主と崇め畏怖していた集落の人々にまで及び、ついには飯島(宝田明)たち調査隊一行にも襲い掛かりました。その悲しみの叫びは秘境に木霊し、なんともやるせない結末へとひた走って行きました。異形のものが迎える最期はいつも切ない…
同年公開の「ゴジラ」とは違うアプローチで人類の過ちを告発し、警鐘を鳴らしていました。「ゴジラ」とキャストの殆どが被っていたし、これまた名作と来ている。
1954年、なんとすごい年なのか…
[余談]
監督助手、岡本喜八。マジか!
※修正(2023/01/20)
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