十三人の刺客(1963)のレビュー・感想・評価
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徹底的にリアリティを追求、東映「集団抗争時代劇」の代表作
新文芸坐さんにて「『十一人の賊軍』公開記念 東映集団抗争時代劇の系譜」と題した特集上映開催(2024年10月7日~10月15日)。
本日は『十三人の刺客』(1963)、『忍者狩り』(1964)、『十一人の侍』(1967)の3作品を一気見。
『十三人の刺客』(1963)
2010年の三池崇史監督のリメイク版も印象深いですが、こちらは工藤栄一監督のオリジナル。
片岡千恵蔵氏、嵐寛寿郎氏、里見浩太郎氏、月形龍之介氏など「忠臣蔵」のようなオールスターキャスト総出演作で超豪華。ストーリーは徹底的にリアリティを追求して武士の一分(名誉や面目)、忠義のための兵刃を交える両陣営の侍たちの悲哀や、ラストの美濃落合宿での13人対53人の実に30分を超える時代劇史上最長の対決シーンは「人を斬ったことのない平和な時代の侍たちの戦い」を見事に表現していましたね。
キャストでは浪人・平山九十郎を演じた西村晃氏が晩年の「水戸黄門」では観れない、まるで『七人の侍』の久蔵を彷彿とさせる鮮やかな剣客を披露。そして何といっても松平斉宣役の菅貫太郎氏の残酷で軽薄な馬鹿殿様が白眉、映画史に残る悪役、ヒールの誕生でしたね。
まさに東映「集団抗争時代劇」の代表作ですね。
死のうと思えば生き、生きようと思えば死す。
"東映集団抗争時代劇路線" の一編。
Amazon Prime Video(東映オンデマンド)で鑑賞。
リメイク版(2010年)は鑑賞済みです。
勧善懲悪ばかりの時代劇に新風を吹き込んだ集団時代劇路線の名作。感情を極力排して描かれた組織同士の抗争がダイナミックで、敢えてのモノクロがリアリティーを醸し出す。
竹馬の友が敵同士となって展開する頭脳戦に権力闘争の悲しさが凝縮されており、武士道を懸けた勝負に手に汗握りつつ、人の運命について思いを馳せずにいられませんでした。
ご政道を正すためとは言え、幕府にとって新左衛門たちは捨て駒に過ぎない。半兵衛も残虐非道の殿様に呆れながら、立場上決死の覚悟で守り抜こうとする。なんと云う残酷な運命…
クライマックス、13人対53人の死闘が素晴らしい。リメイク版に劣らぬ壮絶な時間でした。手持ちカメラで人物の動きを追うなどしてアクションの迫力を際立たせる工夫がされていたし、手練れであっても形振り構わず敵に向かうと云う演出は従来のチャンバラとは一線を画しており、戦の絶えた平和の世に斬り合うことのリアルを突き付けて来るようでした。
カッコの悪いサムライの実態
『侍とは世の物笑いを避けるため死を選ぶ。恐れおののくのか!たかが750石の旗本に、明石10万石だ』
色々な御託並べているが、要は『バカ殿』を13人でせいばいするだけの話。30分位の内容だと思う。
さて、殺陣はどうだろう?カッコ悪いじゃないか!考えてみれば、俳優は御老体ばかり。
東映映画の悪あがきだと思う。工藤栄一監督の作品には見えない。
さて、
サムライなんて、カッコ悪い者たちだ。それを実感できる。飛び道具を使ったり、罠を使って戦うのは、いくら『バカ殿』相手とは言えども、潔いサムライには見えない。
スポーツ選手をサムライにたとえる様だが、『お百姓さんジャパン』の方が地道で努力家のようで良いと感じるが。
この戦(イクサ)で、先ずやるべきことは『バカ殿』の首を取る事である。後は無益なイクサ。賢明なサムライならば、すぐに分かると思うが、史実でないフィクションなのだから、そう言った演出にすべきだったと思う。
映画の雰囲気は
『七人の侍』と『忠臣蔵』。しかし、殺陣は『木枯し紋次郎』や『天保水滸伝』の『出入り』の様だ。つまり、へっぴり腰の殺陣。もっとも、それがリアルなのだが、しょせんフィクション。真面目にリアルな殺陣をやる必要は無いと思う。
東映はこの頃から、いわゆる『反社会集団の映画』の制作が始まる。殺陣の出来ない役者しかいなくなったのが原因だと推測する。チャンバラ映画の良さはかっこいい殺陣にあると思う。それは西部劇には無い。
13人対53人の団体戦
東映の「集団抗争時代劇」と呼ばれるジャンルの一作。
工藤栄一監督がこのジャンルを確立させた記念碑的代表作。
NHK BSプレミアムの放送を録画して鑑賞。
引きの映像とローアングルによる映画的構図の見本市のような傑作である。
小さな宿場を要塞化して戦うところは名作「七人の侍」 を連想させるが、あちらは攻めてくる野武士軍団を迎え撃つのに対して、本作は罠を仕掛けて敵をおびき入れて戦う。
「今の世に真剣で戦った侍などおらぬ」
「不意を突いて一人で三人がせいぜいでしょう。4倍の敵では討ち漏らす恐れがある」
池上金男のオリジナル脚本は、チャンバラ映画の常識を覆すリアリティがある。
それに応じて、クライマックスの大決戦の殺陣では、手練れたちといえども必死に刀を振り回す、なりふり構わない戦いぶりを見せる。
剣の達人平山(西村晃)の最期など、刀が折れてしまって恐怖の表情で逃げまどうという演出。
十三人のキャラクターそれぞれは深掘りされていないので、誰かに共感するようにはなっていない。あくまでドライに男たちの戦いを見せていくのみだ。
強いて言えば、敵方である半兵衛(内田良平)の置かれた立場には幾分迫っていて、大決戦の最後の新左衛門(片岡千恵蔵)と半兵衛の一騎討ちで、侍の死に様を美化して見せている。
工藤栄一の光と影の芸術は、白黒画面でより一層引き立っている。
侍として潔く
悪いお殿様を成敗するには
将軍の弟が権威をかさに着て悪行の限りを尽くす。
老中(丹波哲郎)は目付役(片岡千恵蔵)に暗殺を命じる。
武家社会のしがらみの中で殺すことは出来るのか。
最後は53対13で凄まじい斬り合いとなる。
白黒映画は面白い。
東映時代劇の終焉
序盤の三味線シーン良いよ
66年東映。監督工藤栄一・主演片岡千恵蔵。リメイクの方は未見。
能無し馬鹿殿を討つべく立ち上がった13名が相手方との頭脳戦をへて壮絶な斬り合いへ…。時代劇の名作、とはいえ時代を感じさせる部分はかなりあった。クライマックスのアクションは今の目ではやや物足りない。ただそこへ至る描写をしっかり描いているのでカタルシスはある。
この時代の俳優の存在感は半端なく、歌舞伎や能の表現に近いものを感じた。
あと伊福部昭の低音が効いた伴奏とても良かったです。
このリメイクを考えた人の気持ちはよくわかる。今の技術&表現力なら更に面白いものが出来るだろう、と。してその結果は。今度確かめたいと思います。
とてもよかった
特にクライマックスのアクションが素晴らしかった。ただ、橋を破壊するなら人が通行している時の方がよかったし、敵を追い込んだ場所にも仕掛けて欲しかった。敵の数が多すぎるように見えた。味方が景気よく命の炎を燃やし尽くしていくのが壮絶。ラストのタイマン勝負も素晴らしい。
リメイク版もよかったけど、こっちも素晴らしい。
残念な点もあるものの大満足の娯楽作品です!
これは面白い!
極上の娯楽作品だ
七人の侍と椿三十郎と忠臣蔵をかき混ぜたような内容です
酷薄怜悧な老中筆頭役の丹波哲郎が素晴らしい
そして何より、強烈な秘密軍事指令を与えられた目付役の片岡千恵蔵もまた素晴らしい!
選りすぐった精鋭を前に「お主達の一命、この新佐が命じるままに使い捨てに致す」と言いきるシーンは痺れました
他の誰にも出来ない恐ろしく困難なプロジェクトの指名を受け、その達成のためには優秀な部下を幾人も非情であっても擂り潰さなければならないことを覚悟した言葉です
こう言いきってくれてこそ命を投げ出して働けると言うものです
現場の上級指揮官はかくあるべしという姿を体現しています
男が男に惚れなければ命を懸けて働けはしないのです
そしてその副官役の嵐寛寿郎も燻し銀の名演を見せます
副官の重要性や参謀のありかたの理想像を見せます
ストーリーも中盤はプロフェッショナル同士の知略の戦いとなり、クライマックスの決戦に至るまでのほうが面白い程
敵方の指揮官鬼頭半兵衛の造形も素晴らしく、内田良平が椿三十郎での仲代達也を彷彿とさせる熱演を見せます
襲撃計画を練っている正にその場に敵方の指揮官が単身乗り込んで来るのですから圧巻です
中盤の戸田の渡しでの襲撃を想定して、襲撃側を一枚上回る防備計画の見事さや、指揮ぶりの鮮やかさで、襲撃を未然に封殺していまう有能さを印象付けて、敵側の手強さの演出も良く出来ています
クライマックスの激闘シーンも迫力あり、中仙道美濃落合宿を防塞化してデスゾーンを形成して多勢に無勢の不利を解消する工夫もなかなかに本格的で見応えがあります
計略を弄して敵方の百数十人の護衛部隊を43人にして13人で迎え撃つのですが、それでも彼我の兵力比は三対一以上です
つまりランチェスターの法則にある攻守三倍の法則と言う軍事常識から見て尋常の手段では勝てないわけですから、そこを良く映像にして見せます
集団殺陣といっても単に大勢がてんでにチャンバラをするようなデタラメなものではありません
副官の倉永左平太がこういいます
「今の世に真剣で戦った侍なぞはおらんのだ、我にも無ければ相手にもない、人が命と命をぶっつけあい戦うときどんなことが起こるか誰にも想像がつかんのだ」
舞台は1845年の江戸時代末期です
戦国の世から250年近く続いた平和の世の中での戦闘なのです
果たしてクライマックスの激闘がついには、血みどろの肉弾戦になったとき、あれほど冷静でプロフェッショナルな殺し屋的な浪人が、わめき逃げ惑う姿を呈するまでたたかうその姿を見せるのです
音楽は怪獣映画の音楽の巨匠伊福部明その人
今にも怪獣が出そうなおどろおどろしい劇伴で盛り上がります
残念な点は刺客それぞれのキャラクターが立っていないこと
わざわざ「これで十三人になったな」という七人の侍の台詞をもじったのに、肝心の三船敏郎に相当する若い郷士も上手く消化仕切れてません
もったいない限りです
それでもラスボスや敵方指揮官との一騎討ちとかお約束のシーンも用意されており納得、大満足の時代劇です
しかしこれでヒットしなかったというのですから
残念です
本格時代劇の終焉を飾る大輪の花のような作品です
もうテレビの時代劇で十分という時代に突入したということたったのでしょうか
1963年の作品ですからカラーで撮れた筈ですがリアルさをだしたかったのか、黒澤作品と同じ土俵で撮りたかったのか白黒作品です
ただ作劇も戦闘シーンも如何に黒澤明監督が富士山の様に仰ぎ見る偉大な存在であったのかを再確認するにとどまっているのも確かです
2010年にリメイクされたそうですが、現代に舞台を移して自衛隊の秘密軍事作戦というような内容に翻案したリメイクを観てみたいと思いました
戦いの描写は物足りない
総合70点 ( ストーリー:80点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:60点|音楽:65点 )
絶対的身分制度の下で不条理がまかりとおる時代の、侍の意地と厳しい生き様が描かれる。
そのような物語はなかなか良いと思うのだが、戦いの場面の殺陣はもう一つ迫力に欠ける。覚悟を決めた剣の達人を揃えたはずなのに、いくら真剣勝負が初めてで緊張しているとはいえ、大勢を相手にただ刀を適当に振り回すだけの素人のちゃんばらはいただけない。いくら準備に時間をかけて仕掛けを作って奇襲攻撃をしているとはいえ、四倍の数の精鋭を相手に戦うのだから、もっと迫力のある演出で観たかった。前半の状況の描写は悪くなかったが、後半の戦闘の演出は古さを隠せない。
それと登場人物の背景の説明や描き分けが弱い。13人の刺客も多くはその他大勢役になってしまっている。
侍(浪人)だって命は惜しいわい!!
どうしてもリメイク版と比較してしまうのですが・・・。
両者に話の大きな違いはないけれど
リメイク版よりも淡々と描いているように思いました。
逆にリメイク版の台詞は忠実に原作を踏襲していること、
なおかつただの焼き直しではなく
新たな要素や“みなごろし”“斬って斬って斬りまくれ”といった
作品を象徴するようなフレーズを付け加えていたことも分かり、
リメイク版に対する評価が上がりました。
リメイク版での批評にもあったように
十三人のうち五、六人は“十把一絡げ”になってしまっている感は否めません。
むしろ、リメイク版の方が短いながらも丁寧に描いていたような気がします。
そう思うと長尺であるからかもしれませんが
「七人の侍」の方がやはり一人ひとりのキャラクターがしっかりと描かれているような気がしますし、
やはり十三人は数的に多いのかなとも思います。
しかし、何といってもこの作品は肝は
西村晃が演じる浪人の描き方です。
侍(浪人)とは“ストイック”“あまり動じることがない”、
そういったイメージを持ってしまいますが
最後の大殺陣で見事に裏切ってくれます。
こんな描き方をした時代劇は見たことありません。
より人間くささを感じました。
侍。悲しき行き方と死に方
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