劇場公開日 1963年12月7日

「13人対53人の団体戦」十三人の刺客(1963) kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.013人対53人の団体戦

2020年11月4日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

東映の「集団抗争時代劇」と呼ばれるジャンルの一作。
工藤栄一監督がこのジャンルを確立させた記念碑的代表作。
NHK BSプレミアムの放送を録画して鑑賞。

引きの映像とローアングルによる映画的構図の見本市のような傑作である。
小さな宿場を要塞化して戦うところは名作「七人の侍」 を連想させるが、あちらは攻めてくる野武士軍団を迎え撃つのに対して、本作は罠を仕掛けて敵をおびき入れて戦う。
「今の世に真剣で戦った侍などおらぬ」
「不意を突いて一人で三人がせいぜいでしょう。4倍の敵では討ち漏らす恐れがある」
池上金男のオリジナル脚本は、チャンバラ映画の常識を覆すリアリティがある。
それに応じて、クライマックスの大決戦の殺陣では、手練れたちといえども必死に刀を振り回す、なりふり構わない戦いぶりを見せる。
剣の達人平山(西村晃)の最期など、刀が折れてしまって恐怖の表情で逃げまどうという演出。
十三人のキャラクターそれぞれは深掘りされていないので、誰かに共感するようにはなっていない。あくまでドライに男たちの戦いを見せていくのみだ。
強いて言えば、敵方である半兵衛(内田良平)の置かれた立場には幾分迫っていて、大決戦の最後の新左衛門(片岡千恵蔵)と半兵衛の一騎討ちで、侍の死に様を美化して見せている。

工藤栄一の光と影の芸術は、白黒画面でより一層引き立っている。

kazz