しとやかな獣のレビュー・感想・評価
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昭和のパラサイト
黒い戯画
しとやかな獣とは、高度成長して繁栄していくように一見見える日本人そのものの事
しとやかとは、振る舞いや話し方などが落ち着いていて品があること
題名は、つまり獣がそんなフリをしているということ
それが本作の内容です
5階建て公団団地の4階の2DK
ベランダ側から撮影するとまるでその二部屋が舞台のように見通される
殆ど全てがその2DKと玄関前と階段だけで物語は進行します
劇中に流れる音楽はテレビのゴーゴー音楽以外は能の謡曲です
つまり本作は映画の形式の舞台劇なのです
カメラは狭い2DKの壁を避けて、浴室の半ドア越しに、居間の天窓越しに、時には天井からや、足元からの視点で撮影されます
それにより私達はその部屋の窮屈さを実感するのです
舞台装置の奥行きを感じ取れるのです
普通の映画のような壁を取り払って撮影される空間の広がりはないのです
階段はまるで歌舞伎座の花道のように時に真っ直ぐに長く伸びています
そんな階段の団地なんてあるわけがありません
その階段を独白しながら登場人物が退場したり、入場したりしてくるのです
そしてすれ違っていても互いに気付かない、空間は同じ画面でも時間が異なるという見事な演出までしてみせます
このような独創的な舞台と演出手法の中で、俳優達がまた恐ろしい程の名演技を繰り広げていくのです
なんと野心的で、実験的で冒険的で、それでいて娯楽性を失っていないのです
川島雄三監督の恐ろしいまでの才能を感じます
この時代の日本映画のレベルの高さには本当に驚かされます
ラストシーン
手前に荒涼とした埋め立て地の光景があり、その向こうに舞台の団地が広がっています
これが本作のテーマで、題名の理由です
あの団地の生活は当時では近代的な最先端の暮らしなのです
でもその本当の姿は手前の荒涼とした埋め立て地なのです
それが戦後の繁栄の姿なのです
しとやかな獣とは、高度成長して繁栄していくように一見見える日本人そのものの事だったのです
全編面白いすごいよこれ
おもしろいという評判だけは聞いていて鑑賞。
うひょぉおおーこりゃスゲエ! 1962年製作ってのが信じられないほどのハイセンス! 監督川島雄三とは何者なんだ!という驚き。なぜ今まで見なかったんだオレ!
団地の一室と階段部分だけで話がすすむストーリー。一癖も二癖もあるキャラクターがスリリングに絡み合う。凝ったカメラアングル。窓からしか見えない外の風景。能だか歌舞伎のミスマッチな音の組み合わせ。アップテンポな会話劇だが片時も飽きさせない。そして若尾文子の美しさ。
邦画の歴史でもこんなセンスは突然変異的ではないかしら。同時代に似た映画を他に知らない。現代でも十二分に通用するブラックコメディ。96分内にいくつも印象に残るシーンがありましたね。
幕末太陽傳よりむしろこちらの方が好み
善人が生きるのは・・・
マンションの一室、夫婦(伊藤雄之助と山岡久乃)は人とをだますのが得意、娘は作家の愛人で親のために借金をせがんでいる。
息子は会社の金を横領、半分は親に、半分は恋人(若尾文子)につぎ込んでいる。
息子の会社が金を返せと乗り込んできたり、恋人がもうお金はいらないので別れると言いに来たり、同じく恋人に騙された税務職員がきたり、と賑やかなもんだ。
監督は川島雄三、原作・脚本は新藤兼人、ある意味、とても怖い話だ。
若尾文子がセクシーだった。
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