「夏目雅子が生きた“時代”を刻んだ値打ちモノ」時代屋の女房 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
夏目雅子が生きた“時代”を刻んだ値打ちモノ
1983年の公開当時に観て、ずいぶん大人の雰囲気だと感じ入ったものだが、撮影時はおそらく23か24。今観てもその早熟ぶりに驚かされるし、本作から2年後に白血病で亡くなったことも邦画界にとって計り知れない損失だった。
前年公開の「鬼龍院花子の生涯」では渡世人に育てられ極道相手に啖呵を切る芯の強い女性役で話題になった夏目雅子が、「時代屋の女房」では都会的で気まぐれな猫のような面も垣間見せる真弓と、東京での生活に馴染めず故郷・岩手での結婚を控えている純朴な美郷の二役で、多面的な魅力をふりまいている。初見の際は真弓が失踪後に変装して安さんの前に現れたのかと勘違いしたが、思うに、一本の映画で夏目雅子のさまざまな表情をたっぷり収めるための二役だったのだろう。
時代を封じ込めた古物を売る骨董屋が舞台だが、図らずも夏目雅子が生きて演じた時代をフィルムに刻み後世に伝える映画となった。
コメントする