地獄門のレビュー・感想・評価
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人妻京マチ子は衣装も含めて実に妖艶だが、主人公長谷川一夫の彼女に対する言わばストーカー的しつこさ・強引さに辟易
衣笠貞之助 監督による1953年製作(89分)の日本映画。
原題:Hell's Gate/The Gate of Gate、大映。
御所侍(山形勲)の妻、袈裟御前役の京マチ子は流石というか、様式的だが妖艶さを醸し出してとても良かった。芥川也寸志による音楽も東洋的雰囲気を演出し悪く無い。ただ、力づくで他武士の妻を自分のものにしようとする、平康の乱で平家側で戦った若き武士遠藤盛遠を演ずる長谷川一夫の大袈裟な演技に、今の観点から見ると、どうしようもない古さを感じてしまった。
また、夫の方の山形勲の誠実さと潔よさと対照的な、長谷川一夫の言わばストーカー的しつこさ・強引さに辟易としてしまった。まあ、袈裟御前がその強引さに抵抗を諦めて、夫の身代わりとなって彼に殺されるのも、説得力があったとは言えるのだが。
袈裟が身につける衣装の美しさや住んでいる家の造形、琴の使い方などはまあ良かったが、カンヌ・グランプリと言われると、脚本等それ程の映画ではないな,とは思ってしまった。
監督衣笠貞之助、技術監督碧川道夫、脚色衣笠貞之助、原作菊池寛、製作永田雅一、撮影杉山公平、美術伊藤熹朔、音楽監督芥川也寸志、録音海原幸夫、照明加藤庄之丞、色彩指導和田三造。
出演
長谷川一夫盛遠、京マチ子袈裟、山形勲渡、黒川弥太郎重盛、坂東好太郎六郎、田崎潤小源太、千田是也清盛、石黒達也彌仲太、植村謙二郎政仲、清水元三郎介、毛利菊枝左和、南美江刀根、荒木道子真野、澤村國太郎盛忠、荒木忍家貞、香川良介康忠、小柴幹治宗盛、南条新太郎胤成、近衛敏明真澄、殿山泰司加喜助。
醜い日本のフィルム・ノワール
『盛遠はつらいよ』って、心が醜くて、格好悪い男をイケメン俳優が演じる。
素晴らしい日本映画と言えないか?
『田舎侍!』と言われただけで、お上の廊下で斬りつけ、お家を断絶まで追い込む君子を『忠臣』とか言って正当化するような日本文化の醜さ。しかし、
1950年に『羅生門』
三船敏郎、森雅之、京マチ子
1953年に『地獄門』
長谷川一夫、山形勲、京マチ子
さて、三角関係の成れの果て。
地獄門は色彩も撮影方法も芸術の域だが、ストーリーは羅生門を意識し過ぎている。
だから、どっかの映画賞をとっているようだが、そこまでの傑作とは思えない。
『なぜうちあけてくれなかったか?』って、その訳が分からないのが、この映画の結論だろう。でも『渡』は少なくとも最後に学習している。
長谷川一夫あんまりひどい男で
日本最初の総天然色?美しいカラーに二つ星。
まあとにかく長谷川一夫ひどい男で、坂東武者かなんか粗雑な男なら、仲の良い夫婦のかみさんに横恋慕して許されるのか。もう少しでレイプするんじゃないかとヒヤヒヤした。こんな野卑な男を長谷川先生にやらしちゃいかん。顔が違うだろ。あげく自分が女を殺した後、夫が自分の首を切らないのは臆したか、とは最低。
キモの女が入れ替わるプロット、山崎ハコの兄妹心中を知っていたのですぐ読めた。
これでよくカンヌグランプリ。脚本も他の大物連に比べれば無駄が多く冗長だと思った。
山形勲の立派な顔が印象に残った。
映画も物語も古い
総合:55点
ストーリー: 55
キャスト: 65
演出: 70
ビジュアル: 60
音楽: 60
長谷川一夫演じる盛遠は、今で言うところの立派なストーカーである。相手の意思も関係なく、脅してでも自分の好きな女を自分のものにしたいという自分勝手な役である。もちろんこの時代の映画であるから彼はストーカーなのではなく、男尊女卑で権力者が他人のことを好き勝手が出来る時代であることを考慮に入れての役の設定だろう。しかし力でなんでも出来るとかなり勘違いしたこの役は、現代の価値観からするともう見ていて痛々しいくらい情けないものであった。
そして京マチ子演じる袈裟もそうである。この時代の貴族の箱入り娘であるから、せいぜい文学以外にまともな教育もないだろうし危険にどうやって対応していいかなどわかりはしないだろう。とにかく叔母を人質にとられ、夫を殺すと言われているのである。自分が死ねば万事収まると考えたとしても致し方ない。
彼女の夫は、妻に信用されていないからこの事件を打ち明けられなかったと嘆いた。製作者は妻が夫を信用していないからというつもりで作ったのだろう。しかし彼女が夫を信じられないから危険を打ち明けなかったのか、単に危機対応能力がないから打ち明けなかったのか、本当のところは謎のままである。現代犯罪科学を多少知っていれば、弱い者は簡単に力の強いものに従ってしまうものということは常識。製作者はそこまで理解してこの物語を作ったのかどうか疑問である。ただ少なくとも自分を犠牲にしてまで家族の命を守ろうと必死なことだけはわかった。
そして最終的には非常に拙い結末となる。それもこれも盛遠が愚かな振る舞いをして、それに対して袈裟がつたない対応をしたからである。どうも現代の価値観の中で生きていると、このような彼らの行動に共感できない。当時の時代背景や価値観を考慮して彼らの行動を理解しようとは努めるのだが、それでも駄目なのである。こんな行動とっていればこうなるのは仕方ないだろうし自業自得だろうと、少し距離をとりながら半ば呆れつつ彼らを眺めてしまう。
それはまるで無能な経営者が拙い経営をして会社が倒産するとか、ろくに練習しない野球チームが試合に負けるくらい当たり前の光景を見ているようである。結論に何も意外性がない。
NHKのBSで今回の放送を見たのだが、映像はデジタルリマスターなんだそうで古い割には見やすくなってました。でも音声が良くなくて、侍たちが低い声で早口で喋っているところは時々聞き取れない部分もありました。あまり快適に見れたものではなかったです。
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