地獄の掟に明日はないのレビュー・感想・評価
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降旗・高倉コンビの出発点
「冷戦続く限り不況なし」・・・顧問弁護士郡司(三國)の言葉が興味深いし、ヤクザの抗争を全て国の戦争に喩えてある、というか、そういう風に見えてしまう。原爆症に苦しむヤクザという点では異色の任侠映画。これが降旗・高倉コンビの出発点でもある貴重な作品だ。
山崎組(組長:河津清一郎)、権藤組(組長:佐藤慶)という対立構造。元々権藤は山崎の子分だったが、2年のムショ暮らしの間に勝手に組を立ち上げてしまったとか。郡司は山崎の顧問弁護士だったが、平和的な解決とかなんとかまともなことを言いつつ、両者に戦争をけしかけてた節があった。そして、それぞれの組の若者が殺され、全国から助っ人を呼び、緊迫した状況になったとき、手打ちよろしく、競艇場の組合長代理人となってしまう。そして八百長レースを組んで儲けようとさせたのだが、トップレーサーの岩城がヤクザの脅しに負けず、そのレースに勝ってしまい、またまた二つの組は泥沼に落ちようとしていた。岩城は滝田(高倉)の惚れた由紀(十朱)の弟だったこともストーリーを盛り上げている。
殺された若者の恋人だったあけみ(南田洋子)とも仲が良かった滝田。「堅気の女性がどうしてヤクザなんかを好きになった?」と聞くと、「顔を引っぱたかれたのよ」と答えるあけみ。それが伏線となり、リンチを受けていた岩城を取り戻しにきた由紀に対して頬を引っぱたく滝田。そこで、惚れ直しちゃったんだな・・・
抗争も大きくさせる前に先制攻撃で叩いてしまえ!と親代わりでもあった山崎に「権藤を殺れ」と言われた滝田。由紀に対しては故郷でもある島へ行こうと言い残し、小浜温泉で療養中だった権藤を刺す滝田。そして、彼らを売った郡司の事務所へ向かい、日本刀でブスリ。そして由紀の待つ波止場へ向かうが、権藤の手下の鉄砲玉に不意打ちを食らう・・・
戦争には仕掛人がいる!それが郡司だったり、滝田の幼なじみでもある新聞記者の北島(今井健二)だったりするのだ。そのヤクザを手玉にとり、操り人形のように駒を指すところも戦争に喩えてあるのだろう。ストーリー的には笑ってしまうほど稚拙な部分が露呈しているし、完成度も高くないけど、社会派任侠映画を作った監督の心意気を買いたい。
【2012年ケーブルテレビにて】
名コンビ、誕生
長崎。競艇場の利権を争う2大ヤクザ。
惚れた女、八百長レースを強いられた女の弟。
2大ヤクザを手玉に取る腹黒弁護士、裏切られた父親代わりの親分。
男は、捨て身の覚悟で闘いに挑む…。
ヤクザであっても一般人には絶対迷惑かけない。
勿論堅物で不器用、女性には紳士的。
恩義と仁義を重んじる。
“THE高倉健”のイメージそのもの。
健さんの数ある任侠映画の、1966年の他愛ない一本だが、見るべき点は幾つかある。
主人公が、被曝者。
そんな設定の主人公の任侠映画はおそらく無いのでは…?
長崎の原爆で家族を失い、孤児だった自分を我が子のように育ててくれたのが、親分。
そんな親分が渡世の道から外れそうな時は放って置けないし、誰かに嵌められたと知っちゃあ仇を取らずにはいられない。
が、いつ原爆症が発症し、死ぬか分からない。
時折、原爆症に苦しめられる。
任侠の世界は死と隣り合わせだが、この主人公にはさらに死の陰が付きまとう…。
B級任侠映画で、高倉健と三國連太郎の贅沢な共演。一番悪い奴、三國連太郎が腹黒弁護士を、さすがの巧演。
河津清三郎、佐藤慶、名優たち。
十朱幸代が可憐。南田洋子が妖艶。
そして本作は、高倉健と降旗康男監督の初タッグ。
当時まさかこの後名コンビになろうとは誰も思わなかったろうし、そもそも作品からもそんな気配は感じられない。分かる人が居たとすれば、超能力者か未来が見える人だ。
でも、当人たちは何か通じ合うものを感じたのだろう。でなければ、名コンビとして続く筈がない。
以来、高倉健がこの世を去るまで、46年20作!
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