「タイトルなし」潮騒 しおさい(1975) こうたさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
神保町シアターで鑑賞。
主演でいながら、出番の少ない百恵ちゃん。
私はいいから友和さんを…と、早くも奥ゆかしい賢妻のようですが、単に忙しすぎただけですね。
小悪魔キャラは百恵ちゃんのイメージではないし、友和さんは都会的すぎて役柄のイメージじゃないのに、ミスマッチ感でさえ強烈な印象にしてしまう。二人の勢いを感じます。
百恵ちゃんにはすでに妖しげな女の色気がただよいますが、友和さんの清潔な事!
百恵ちゃんの溢れ出る魔力を、友和さん清廉さが必死に留めているかのよう、まだ早いよと。
とにかく友和さんの美しさが際立ちます。
友和さんを初めて男性として意識したのは、潮騒の撮影中と、蒼い時に書かれてた気がしますが、この映画はまさに、われわれも百恵ちゃん目線で友和さんを見つめてしまう作品といえるでしょう。
恋に落ちる臨場感を味わってしまうのは、友和さんの魅力のせいなのか、百恵ちゃんの魔力のなせる技なのかは、解りませんが。
三島由紀夫が生きてたら、山口百恵をどう評したか。
今となっては、それが1番気になりますね。
ま、この作品に関しては三島先生も友和さんに釘付けでしょうが。
かつて山本富士子に初めて会った時、三島は「女性には大天才がいない代わりに、絶世の美女がいる」と感想を述べたそうですが、山口百恵という少女は、誰も解けなかった幸せの方程式を、いとも簡単に解いてしまう、人生の大天才だと見抜いたでしょうか。
原作はギリシア神話を題材としているそうですが、山口版潮騒は、美しい人間の青年に恋した女神の憂いと、女神を妻にする男の決意の物語です。
伝説から神話になった恋人達。
三島の千里眼は、そんな二人が演じた時、潮騒という作品が完成することを、見抜いていた気がするのです。