「秋刀魚の味」秋刀魚の味(1962) ちゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
秋刀魚の味
秋刀魚の味、とあるが、本作に秋刀魚は出てこない。小津安二郎の作品には、お茶漬けの味という作品があるが、こちらにはお茶漬けを食べるシーンがさかんに登場する。秋刀魚のわたは、ほろ苦い味がするため、笠智衆の娘を嫁にやる独身親父の心情を表題で表現したものと思われます。また、この映画は老いた人間の孤独もテーマになっているが、老いた人間の孤独は62年経った今も変わらぬ普遍のテーマである。まさに小津安二郎の遺作に相応しい映画である。また、本作、何度観ても不思議と飽きない。おそらくこの作品には全く違和感のない日常が存在するから、ついつい魅入ってしまうのだと思う。人は映画のようにそうそう激情を表したりはしない、彼の映画はいつも普通なのである、その普通さが未だに人を引き付けて止まないのである。これがオズの魔法使いたる所以なんだろう。
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