「「あぁ、一人ぼっちか」」秋刀魚の味(1962) komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
「あぁ、一人ぼっちか」
物語の最後、主人公の周平はこう呟いてから軍艦マーチを口ずさむ。
社会的地位があり、酒を酌み交わす学生時代からの友人達もいる。長男は独立しているが近くにおり、その妻は時々様子を見に来てくれるという。同居する学生の次男は明日の朝ご飯を炊いてくれるという。妻を早くに亡くし、娘を嫁に送り出したとはいえ、孤独とは言えない様に思う。
それでも強かに酒を飲んだ周平は、一人ぼっちだと呟く。そして娘のいなくなった2階へと続く階段を見上げた後、台所でわずかにふらつきながら自分で湯冷ましを注いで飲む。
まだこの心境を私は理解できない。ただ感じるのは、周りに急かされるように進めた娘の結婚が、果たして本人にとって良かったのかという自信のなさ。長男だけでなく娘のことすらも理解できていなかったという自覚。それらは、妻は自分と結婚して幸せだったのかという疑問に繋がっていく気がする。そうだとすればとても辛いし、とても孤独だ。最後に口ずさむ軍艦マーチは、「艦長時代も孤独だったじゃないか、明日からも大丈夫だ」と自分に言い聞かせていたのかもしれない。
様々なこだわりを感じる画作りは素晴らしいが、それ以上に娘を送り出す所からラストまでの流れの計算高さは恐ろしい。
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この作品と対称的なエンディングとして思い出したのは、『花嫁の父』というアメリカの映画。岩下志麻とエリザベス・テイラー、どちらも娘の花嫁姿が言葉にならないほど美しいという点では共通している。
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