劇場公開日 1962年11月18日

「秋刀魚はどこに存在する?」秋刀魚の味(1962) abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0秋刀魚はどこに存在する?

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

悲しい

小津安二郎監督作品。傑作です。
今までみてきた小津作品の中で一番好きかも。遺作であるし、映画美の極致をいった作品のように思う。

構図や場面の反復によって、同じく現れるものは、人間の普遍的な営みとして昇華され、差異は人の感情の移ろいや不在を見事に描いている。

最後のシーンがとても胸にくる。長女の路子(岩下志麻)を嫁がせた父の周平は、酔っぱらって一人寂しく家に帰る。そして酔い冷ましに台所で水を飲むのである。周平はかつて次男の和夫にいった。これからは一人でなんでもしなくてはいけないと。そして現在、周平は路子が不在の家で、これから一人でなんでもしなくてはいけないのである。この不在の描き方と嫁がせた父の孤独はひどく胸に刺さる。

まだまだ映画の細部に目が届いていない。これからも何度も観たい作品である。

まぬままおま