「映画史上屈指の名カット!」山椒大夫 s'il vous plaît!さんの映画レビュー(感想・評価)
映画史上屈指の名カット!
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角川シネマの大映映画特集で見ました
作中では二つの人物群が対比的に描かれている
①人を目的としか捉えない人たち
②人を目的ととらえず、それ自体に価値があると評価する人たち
時代は下っても「効率」と「公正」の問題を考えるとこれは大変重要な示唆を持つのではないか。我々でも①ような精神性で人と接していることは少なくない。むしろそれが人の本質なのだとすれば、「人のモノ化」は理性に訴えてもどうにかなるものではなく、「制度」に従って制御するしかないのだろう戸まで思わされた。
安寿が入水するシーンはこれまで見た映画の中でも屈指の名シーン。
遠くから安寿を老婆が見つめる視点。安寿は一礼して靴を脱ぎ、水に向かって一歩、また一歩と歩を進める。画面終焉部の植生による黒色と池&安寿が構成する白色がコントラストをなしていて美しい。安寿が水の中を歩いて進むごとに波紋が生じて綺麗な同心円を描いて広がっていく。全くうろたえる様子はない。入水する瞬間は描かれていないが、完全に水に沈んだ後、ブクブクと泡が出て、波紋が消える。
悲惨な奴婢の描写が続く本作全体とのコントラストもくっきりとしていて、神々しいまでの美しさに至っている。
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