「壮絶なアクション特化型八犬伝」里見八犬伝(1983) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
壮絶なアクション特化型八犬伝
DVD(デジタル・リマスター版)で3回目の鑑賞。
原典、原作共に未読。
角川映画の全盛期に製作されたアクション時代劇。里見家への復讐のために蘇った玉梓率いる妖怪軍団と八犬士の繰り広げる壮絶な戦いを、ふんだんな殺陣と特撮で描き出す。
真田広之、志穂美悦子、千葉真一のアクションは至高以外の何物でもない。JAC監修によるアクションの水準は当時の日本映画屈指だろうし、世界相手でも恥ずかしくないと思う。
戦いの中で命を落としていく八犬士たち。多勢に無勢な戦況が否応無しに興奮を高める。クライマックスの大決戦は集団抗争時代劇の系譜を感じられ、とても観応えがあった。
ラストには全く納得がいかない。静姫と親兵衛が手を取り合って変な洋楽をバックに彼方へ馬で駆けていく。「本当にそれでいいのか?」「里見家再興のため戦った八犬士の死の意味はどうなるのか?」と思うし、死んだ本人たちが「行け!」と促すのもとんちんかんで、なんともかんともな結末だからだ。
角川春樹の目指すエンタメが凝縮され煮詰まっている。東映京都撮影所と云う時代劇の本場で、洋画の流行りを取り入れ、名作のオマージュを盛り込み、やりたい放題だ。
よく観るまでもなく、全体的にトンデモなく変な作品なのだが、発散する熱量だけは本物で、圧倒されてしまう。
当時の角川映画の勢いが偲ばれるし、いい意味での無駄な大作感が日本映画もやれば出来ると証明しようとしている。
プロデューサーの勢いと時代のノリが本作の土台にあるのではないか。だがこの感じ、嫌いではない。むしろ、好きだ。
[余談1]
ブック・オフに売っていた原作をパラパラ程度で見たことがあるが、お色気シーンが満載で赤面した。静姫があられもない感じなのだが、その役回りは映画では玉梓のものだ。
[余談2]
改めて観て考えたこと。親兵衛の腕の紋章が消えたのは正義に目覚めたからじゃなく、皮膚を張り替えられたからでは?
[以降の鑑賞記録]
2019/08/10:Ultra HD Blu-ray
2019/11/16:Ultra HD Blu-ray
2024/09/01:Blu-ray(4Kデジタルリマスター)
※修正(2024/09/01)