劇場公開日 1992年12月5日

「稚拙さを誤魔化すショッキング描写」ザザンボ 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5稚拙さを誤魔化すショッキング描写

2024年8月27日
iPhoneアプリから投稿

『バリゾーゴン』のセンセーショナルなポスターで有名な渡邉文樹の代表作。奥山和由が目をかけたほどの才能というから期待して観てみたのだが、面白くなかった。

おそらく現地の人々と思しきキャストは見るからに素人。プロだろうが素人だろうが持ち味を引き出すことは可能だということはジョン・カサヴェテスから濱口竜介に至るまで数多のシネアストが証明しているが、本作に限って言えば悪い効果しか発揮していない。

素人の朴訥さはうまいこと利用できれば独特の不気味さに結実させることもできるが、その前に「棒読み」の印象が先行してしまい、結果的に全く緊張感のない画になっている。もう少し演技指導というか、役者とのコミュニケーションを重ねるべきだったんじゃないかと思う。

そしてその杜撰さを誤魔化すようにショッキング描写(自殺、放火、乱闘など)が挿入されるが、もちろんそんな付け焼き刃には何の意味もない。子供騙しのしょぼいアトラクションだ。

一見すると深遠そうな長回しも細部の作り込みの甘さゆえに単なる技術的稚拙のように思えてしまう。とはいえ実際、本作の長回しは深遠さなどとはまったくもって無縁だ。長さに見合うだけの映画的豊かさがいっこうに立ち上がってこない。素材を取捨選択する苦労に背を向け、長回しが歴史的に担う美学性に凭れかかっているだけという印象を受ける。

本作は一部からカルト映画として評価されている向きもあるようだが、本作のカルト性を担っているのはあくまで本作の元ネタとなった実際の死亡事件だ。本作はその事件の怠慢な再現でしかない。

唯一良かった点とすれば、渡邉文樹演じる学校教師がクラスメイトたちに糾弾されるシーンだろうか。教師を睨みつける子供たちの眼差しを淡々と映していく。ここのショットの長さもちょうどよく、観ていて気持ちが良かった。

因果