櫻の園(1990)のレビュー・感想・評価
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「映画ファンジャナイ!と言われても別にええわ」な作品でした。
お久しぶりです。ここのところ某短歌投稿サイトに入り浸ってしまい、レビューを書く云々以前に映画を楽しむことすら疎かになっておりました。
欠席中「いいね」コメント、フォローしてくださった方々、誠に申し訳ありませんでした。
人の心を0.01mmでも動かせることができる物が映画であるなら、本作を観終えた時の私の気分は「映画ファンジャナイ!と言われても別にええわ」でした。
最も苦手とする「起・承・転・結」がさっぱり見えてこないストーリー展開に加えて、登場人物が大変多くその全てにフォーカスを合わせていたような散漫な描写に全くついて行けず楽しめませんでした。
こういう“アート系”作品が映画ファンの資格の是非を問う試金石であるなら、私は「映画ファンジャナイ!と言われても別にええわ」でした。
唯一心に残ったのは「太田胃散のCМ」でした。
郷愁は誘う。けれど、原作の深みがない。 原作の方が百倍良い。
吉田先生のファン。
吉田先生の描く女子高校生は、もっと肉感的。第二次性徴による変化・アンバランスな危うさを匂わせてくれる。
まだ経験値も低くて、何も考えていないような夢見る乙女を描かせても、どこか、”女”そしてやがて”おばさん”になる片鱗をちらつかせる。
経験値と感受性・思考度が高い女子なら、なおさら、性的な意味だけでなく”女”を匂わせ、それでいて天女の如く、鬼女の如くその存在感を放つ。
純粋で、それでいて泥臭く、神秘的で、”生”を感じさせてくれるような登場人物。
それなりに、悩み、逡巡し、それなりに放り出し、それなりに生きていく。
それに比べて、この映画の女子は皆、砂糖菓子。
何かを抱えていても、金平糖のよう。もしくは琥珀糖。
本音を言っているようでも、男子を前にしたぶりっ子。金魚鉢の金魚。アイドルが頑張っています的な。
そんな彼女たちを愛でたい人々からは珠玉の一本なのだろう。
けれど、私には物足りない。
★ ★ ★ ★ ★
杉山さん、切ない。志水さん、まっすぐすぎて…。
脚本賞をとったのも納得。
でもね。演技が…。賞総なめって、確かに着眼点とか、演出の方法は唸るんだけど。
主要4人はなんとかいい味出しているものの、他のメンバーは棒読み状態。
途中差し入れをしてくる先輩。もう少しどうにかならなかったのか。
たくさんの演劇部員の雑談場面がカメラ目線の会話。確かに日々たわいもない会話をしている。でもその会話に没頭している時の仕草や表情がカメラ目線なんだよなあ。女性の監督だったら、ああは撮らなかっただろうなあ。
そして、主要4人。
城丸さんは、本当は一番際どいはず。ばれたら杉山さんの比ではない騒ぎ。だけど、さりげなく傍観者の役をとってあっけらかんとしていて、え?という感じ。やばいと思っている半面、なんとかなると思っている世間知らずさ・要領の良さからくる万能感。周りがしていない経験している優越感と勇気があるみたいな勘違い。かえってスリルを楽しんでいるのだろうな。
と想像するのだが、演技からは感じない。彼とお付き合いして、演劇部のことやってと時間割をこなしているみたい。男子にしたら、相手してくれるしでもポカやって迷惑かけられなさそうだし、都合がいいのだろうな。
杉山さん役のつみきさん。煙草で指導受けている、その辺の演技がなおざり。何故、このような学校にいながら煙草を吸うメンバーと喫茶店にいたのかとか、吸っていないのに誤解されている憤りとか、確かに脚本にはないけど、ないからこそ、演技で表現してほしかったのだけど、表面的な台詞の解釈だけだった。
でも、志水さん達が写真を撮っている場面を観ている表情。あれはぐっときた。見応えありました。そして、届かない志水さんへのアプローチ。切ないですねぇ。
志水さんも同じ。演技は頑張っているんだけど、なんで急にパーマかけてきたのか、その辺が全く表現されていなかった。別にパーマかけていないおさげ髪だって、そのあとの展開変わらない。ま、杉山さんと指導室に呼び出される為にパーマが必要だったのだろうけど。
倉田さんが一番自然だったかな。いるいるああいう人、みたいな。
そこにいて表現しているだけで、志水さん他各メンバーが、どういう家族の元で、どう成長して、そういう期待をかけられていて、昨日家庭でどういう会話をしてきて、今この場にいるかが全然見えない。
映画中の台詞にはないし、場面もないけど、有名な役者はそこまで考えると聞く。最近、本当に実力のある若手が多かったから、その方々と比べちゃうのはかわいそうなのかもしれないけれど…。
大切な、(伝統行事で毎年やるけど)自分が演じるという点では生涯1度しかない上演が潰れそうなのに、なんかのんきだなあ。そんなに思い入れなく、中止となったらそれはそれでOKで、あくまで”部活”としてやっているからかしら。そういえば「しらけ世代」という言葉が出てきたのってこのころだっけ?劇の上演より、友達とのおしゃべりや告白の方が数段大切ってところは、まさしく高校生を見事に描写したなぁと思う。どうせ、もうすぐ受験でそれどころじゃなく、卒業して別れて行くのだからこの一瞬を大切にというほとんど祈りにも似た思い。
上田氏はさすが。学校にいる場面だけでなく、帰り道、家にいる様子とかも想像出来ちゃう。いいアクセントになっています。
吉田秋生先生の漫画を脚色した映画とな。
でも、吉田先生が描くものってそんな単純なものだっけ?
吉田先生の漫画なら、たったひとコマで、なんでパーマかけてきたのか、その前の志水さんの人生・家族背景を描きだしちゃう。
学校では優等生やっていそうな城丸さんの別の顔。女のしたたかさとこれがばれた時の顛末を想像できない甘さ。もしくは、顛末を想像できない目の前の快楽に興じるだけの幼さのみの女子。それでいて上級生の恋愛ごっこに気づきながらも知らんぷりするしたたかさ。そんな人柄が描き出される。
吉田先生は、けっして砂糖菓子のような綺麗事では済まない複雑な一人ひとりの内面をも描き出しつつ、その人たちの日常の一こまを紡ぎだしていくのがうまい作家さんだと思う。
美化した回顧録と重ね合わせてみるか、男性目線での映画。
確かに、美しい部分の少女たちの姿が綺麗にまとまっており、ちょっとしたほろ苦さと共に気持ちよく映画の世界に浸れる。
この映画が吉田先生原作のものでなければこういう切り口の映画ってあるねと、それはそれで評価できる。
でも、
吉田先生原作と聞くと、登場人物への人間考察が表面的すぎて納得できない。
なので☆3つです。
チェーホフ
大勢の演劇部員が練習場をぐるりと囲んでアイスクリームを食べるシーンに代表されるように、一ヶ所で数人が会話する一方で、他の数人も会話するような同時進行劇。どこまでが演出で決められているのかわからなかったが、この舞台劇と映画劇の融合とでも言うべきダイナミクスに驚かされる。ストーリーはあってもなくてもいい程の些細なプロット。劇が始まるまでの2時間ちょっとの話なんですからね・・・
劇が始まる直前には、実は女子生徒同士の三角関係も見え隠れするが、ここではつみきみほの大人びた繊細な演技がすがすがしい。ほんとにタバコを吸いたかったんだろうなぁ~と思わせる絶妙な演技にも注目だ。
令和の始まりにこそ相応しい映画だと思います
見事な作劇の脚本で、開演前の2時間に少女達の青春を見事に切り出しています
毎年変わり泣く咲く櫻
毎年上演される櫻の園
しかし演じるのは毎年違う少女達なのです
それは終盤の定年間近の先生の終戦から間もない頃の青春とも変わらない姿なのです
時は流れ青春は短く櫻のようにすぐに散っていきます
しかし時は流れども若者達の青春は今年もあり、来年もくるのです
30年目の櫻は来春に咲くでしょう
彼女達は今47歳
きっと彼女達の娘が櫻の園を上演するのでしょう
青春は同じように繰り返されるようにみえて、その短い春に咲く花自身は唯一無二のものなのです
それこそが本作のテーマだと思います
令和の始まりにこそ相応しい映画だと思います
少女たち櫻華の如く
私立櫻華女学園。
毎年春の創立記念日に、演劇部によるチェーホフの『櫻の園』を上演する事が伝統となっている。
その開演2時間前。集う演劇部員たち。
が、各々の問題や出来事で、上演が危ぶまれ…。
原作は『海街diary』でも知られる吉田秋生の同名コミック。
原作では四季の移ろいと共に少女たちの心情が描かれているそうだが、本作では開演2時間前に脚色。原作設定も見てみたかったが、短い時間軸の中で多感な少女たちの心情が濃縮されている。
それをナチュラルに演じたオーディションで選ばれた少女たち。余す所無く活写した中原俊監督の演出。
1990年度のキネマ旬報ベストテン第1位他、多くの映画賞を受賞。
劇中の美しい映像と春の陽光、少女たちの輝きの如く、青春映画の名編。
今では少女たちの何気ない姿を綴る作品は珍しくはないが、当時は新鮮だったとか。
劇的な事件は何も起こらない。
が、少女たちにとって動揺を隠せない問題や出来事は起こる。
突然パーマをかけてきた真面目な部長。
自分の役に自信が持てない部員。
前日、煙草を吸って補導された部員。
果たして、上演は…?
彼女たちにとっては“事件”だ。
演劇部員たちの面々。
特別可愛い娘やアイドルのような娘も居ない。
良くも悪くも、“普通”の女の子たち。
それが親近感を感じる。
と同時に、彼女たちがどんどん魅力的に見えてくる。
宝塚の男役のような凛々しい娘も居れば、パーマをかけた部長もエレガントに。
彼女たちの魅力と、映画のマジック。
展開は淡々と。
でも、少女たちのやり取り、他愛ないお喋りなどが不思議となかなか飽きさせない。
泣き笑いも過剰ではなく抑えて描き、それがじわじわ身に染みる。
そして、少女たちの繊細で瑞々しい心の動き。
友情、憧れ、仄かな恋慕…。
ほんの一瞬の彼女たちの“今”。
心地よく、ずっと見ていたいと思うほど。
満開の櫻の花。
彼女たちも、満開。
見ていたら、生身もいいが、クオリティーの高いアニメーションでも見てみたいと思った。
その時は是非とも、山田尚子監督で。
名社、京都アニメーションで!
甘酸っぱい、切ない爽やかさ
この作品を見たのは、当時、長女が産まれた頃で、春の爽やかさの風を感じ、幸せな時期でした。演劇という皆が主であり、個性のある皆の中で、最も志水(中島ひろ子)倉田(白島靖代)杉山(つみきみほ)が杉山さんが、志水さんが倉田さんに想いを寄せているのを知っている中で、杉山さんは志水さんの事を好きなんだけど、自分の心の中にしまい、そっと告白し志水さんと倉田さんが寄り添い写真を撮っているところを静かに見守る、男女とは違い、でも、そこには甘酸っぱい、切ない、レビューにもありましたように、僕には、最も美しい感動的な作品です。ショパンのピアノがたまらない作品にマッチしています。
もっと称賛を受けていい作品だと思います。
2017になっても見ています。
非常に映画的。
父がじんのひろあきさんと知り合いという縁で鑑賞。
ストーリーがシンプルだったため、他の映画ならではの描写に焦点を当てて「魅る」ことが出来た。タバコに溜まった灰でその人の感情を描写しているのがお気に入り。少ないセリフで映画を描くことが映画の良さだと思った。
一方で、芝居のような臨場感を見事に演出している。それは、同じ部屋で複数演技が行われていることや、役者があるアクションを起こす前段階からスポットを当てていること、役者のシーンへの登場から描いていることなどに起因しているのだと思う。
カメラワークだけでなく、どの場所で聞いた音かということも臨場感を与えている。カメラは引きで音は手前のものを使っている場面でそれを感じた。そうした視点と聴点(?)をしっかりと考えて作られていた。
鏡を利用したシーンと、階段を横から撮影するシーンも気にいっている。
桜が毎年同じように咲くことと、青春を対比することで、終わりある青春を鮮やかに描いていると思った。
じんのさんの他の作品も観てみくなった。
美しすぎる。
初めて映画を見て、美しいって思ったのはおそらくこの映画だったように思う。
チェーホフの櫻の園を題材にとったこの作品は、少女達の可憐な姿、そしてその空気を余すところなくスクリーンに映し出した。
2時間の映画をだいたい2時間でやるというその映画の造りに感心しながらも、美しすぎるその映像にうわっとなった。
映画というものを見てこんなに美しさに圧倒された作品も他にない。
原作の吉田秋生もとてもよかったが、これはまた別物として考えた方がよさそうな気もする。
生涯に残る一本だったように思う。
NHKのテレビで見た。中学か高校くらいのことだったように覚えている。
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