最高殊勲夫人

劇場公開日:1959年2月10日

解説

週刊明星に連載中の源氏鶏太の同名小説を、「完全な遊戯」の白坂依志夫が脚色、「親不孝通り」の増村保造が監督した喜劇。撮影も「親不孝通り」の村井博。

1959年製作/95分/日本
原題または英題:The Most Valuable Madam
劇場公開日:1959年2月10日

あらすじ

結婚披露のカクテル・パーティ、新郎は三原二郎、新婦は野々宮梨子である。二人は、三原一郎・野々宮桃子に続いて同じ家の同じ兄妹同士の結婚なのだ。三原商事の営業部長対秘書の恋愛結婚が二度繰返されたのだ。ところで、現在三原家には大島商事に勤務している三郎、野々宮家には短大を卒業した杏子が残っている。桃子はこの二人を結ばせ、トリプルプレイを狙っていた。三郎と杏子は、お互いに恋人があることを宣言、絶対に結婚しないことを誓った。三郎は大島商事社長令嬢の富士子からプロポーズされていたが、杏子には恋人などいなかった。彼女は早速恋人を見つけねばならなかった。桃子の願いを聞き入れ、杏子は三原商事の社長秘書に就職した。たちまち、宇野・野村という若い社員が彼女の後を追い始めた。テレビのプロデューサーで、富士子の兄の武久も、杏子にイカれてしまった。武久は、停年になった杏子の父の就職先まで探し出してきた。宇野には豊子という恋人がいたが、彼女は杏子に宇野を横取りしないよう頼んだ。杏子は承知した。宇野も杏子を諦らめ、豊子と元のサヤにおさまった。杏子と野村を加えた四人は、社長夫婦に仲人を頼みに行った。この時、杏子に首ったけらしい野村を見た桃子は、一郎に野村を北海道へ転勤させるよう命じた。恐妻家の一郎は従わざるを得なかった。杏子からこのことを聞いた三郎は考えた。社長の細君が社内の人事にまで口を出すようでは三原商事も危いと。自分が乗り出さなくては駄目だと。野村と武久からプロポーズされた杏子は、本当は三郎が好きなのだと気づいた。三郎にしてもそれは同じことだった。二人はロカビリー喫茶の騒音の中で、大声を出して愛を告白し合った。野村を転勤させないこと、会社のことには口出ししないこと、の二つの条件を桃子が承諾したので、三郎は三原商事に入社し杏子と結婚することにした。トリプルプレイに成功した桃子も満足げだった。

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スタッフ・キャスト

監督
増村保造
脚色
白坂依志夫
原作
源氏鶏太
企画
藤井浩明
製作
武田一義
撮影
村井博
美術
下河原友雄
音楽
塚原晢夫
録音
渡辺利一
照明
米山勇
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映画レビュー

2.0 序盤の掛け合いで端から結論は見えている

2025年6月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

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ねこたま

4.0 リメイクできそう

2024年6月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

何の気なしに観たけど、なにげにおもしろかった。オープニングの、オフィスビルとクレジットの組み合わせがおしゃれ。撮影が1959年あたりだから、建物は今ほとんど解体されてるかもしれないね。あと、京急かな、品川なんとか駅から野々宮家までの道が、舗装されてなくて、街灯もなかった。夜まっ暗だ。この当時は、東京の中でも、きっと田舎だったんだろうな。

こんな無邪気であっけらかんとした娘を、若尾文子が演じるイメージなかった。かわいいわ、杏子ちゃん。川口浩って、探険家の姿しか知らなかった。こんなシュッとしてたんだー。若いって素晴らしい。三姉妹の父役の宮口精二って、「七人の侍」に出てた人でしょ。役によって変わるとはいえ、穏やかでまじめないいお父さんだった。丹阿弥谷津子も私のイメージは、母親役だったが、若い頃はこんな華やかだったのね。船越英二が意外に背が高くて、色気があったこともびっくり。いろいろな意味で、新鮮な映画だった。これ、リメイクしたら面白いんじゃないだろうか。

昭和34年、景気いいなぁ。仕事はそこそこにして、夜はわいわい騒いで、人と人の距離が近い。テレビも普及しつつある。英語の曲も流行っているらしい。当時の風俗が、タイムカプセルのように保存されている。この頃を肌で知る人は、どんどん減っていくのだなぁ。

日本テレビの名前が出てくるけど、きっと開局したばかりかな。生放送しかできなかった時代、トラブル起きると大変だ。まあ、今もなんだか大変そうだけど。

長女・桃子の計画通りに進み、今のところ彼女が最高殊勲者であるかもしれないが、これから先はどうなるか。三郎と杏子が逆転する日も遠くないかも。

BS松竹東急の放送を鑑賞。

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ぷにゃぷにゃ

4.5 毒気マシマシのビリー・ワイルダー的喜劇

2022年6月2日
iPhoneアプリから投稿

軽妙洒脱でスピード感のある、日本版ビリー・ワイルダーといった趣のコメディ映画だった。政略結婚を回避しようと奔走する男女がかえって互いを好きになっていくという滑稽譚を基軸に、いくつもの愛憎模様がしのぎを削り合う。とはいえそれらがウジウジと尾を引くことはなく、むしろ一瞬で生起/消滅するので清々しい。

基本的に人間関係の雌雄が言霊バトルによって決するため、セリフの節々がナイフのように鋭く尖っている。中でも兄嫁が言い放った「キ◯ガイだけが成功するのよ」はとりわけ殺傷力が高かった。セリフの一つ一つが静かな水面に落ちる一滴の雫のような小津映画とは対照的に、ワーワーと絶え間なく乱れ舞うノイズの嵐の中で不意に燐光が生じる感じ。

とはいえ主人公の元・婚約相手であった女の扱いはさすがに少し酷い。旧弊的な婚姻制度に疑問を持っている彼女は、定職にも就かないで親の金であらゆるお稽古事を渡り歩いている。それだけでもけっこう酷いが、習字教室のシーン(巨大な筆を持ったジジイが奇声を上げながら字ですらない何かを紙の上に書き殴る)なんかはもう「自由な女性」に対する監督の個人的な悪意が滲み出てしまっている。

作品全体が俗気の強いブラックユーモアに包まれているので、真正面からのツッコミはそもそも野暮というものかもしれない。

しかし気になるのは小津や成瀬の小市民的家庭映画に慣れ親しんだ当時の人々が本作をどのように受容していたのかということだ。婚約相手の女がテレビ局のプロデューサーを電話でフるシーンなんかはあまりにテンポが速すぎてZ世代の私ですら驚いた。

言葉遣いとファッションだけテキトーにアップデートすれば「現代映画」として上映しても全く違和感がないと思う。

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因果

4.5 若尾文子の良さは庶民的なところ、という事を熟知した演出

2020年1月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

増村保造監督映画にハマり色々とデマンドやレンタルで観続けてきたが、ついに観てしまったこのタイトル。増村映画の中の異端中の異端、最高のラブコメディを!

フィルモグラフィーを見ると、人間心理の奥底にある暗部やら闇やら、戦場の狂気やら、サラリーマン社会のダークサイドやら、歪んだ性癖やら様々なものを描いてきた監督。
その増村保造が、パッカーン!!とひたすらアッパーに明るくオシャレでハッピーに展開するスクリューボールコメディを撮ってる!

高度経済成長中の元気な日本を舞台に、おそろしいほどのスピード感で疾走する恋のさや当て。なんてったって若尾文子が可愛くて最高。ビビるほどオープンで真っ直ぐ。こんなヒロインを好きにならずにはおれませんよ。そしてラスト二人の台詞がまた最高。

アクション映画のように怒涛のスピードでドラマが展開するので片時もホッとさせてくれません。ラストまで一気。本家のアメリカ製SBコメディでもここまでのスピード感ある映画はそうはないのでは?とにかく徹底した演出が凄い。

最高のテンポとグルーヴで若尾文子の可愛さを堪能できました。

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散歩男