ゴンドラ(1987)のレビュー・感想・評価
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除け者同士の青年と少女が当て所なく探す"命の意味" "人は一人では生きていけない"を瀟洒に描く自主映画...
公開当時からその筋では有名な作品だったようですが、数年前の公開30周年でのリバイバル上映やソフト化の際には結構話題になってましたね。旧作にしても最新公開映画にしても上映に際しては著名監督、俳優さんやコメンテーターさんが絶賛コメントを寄せるのが常ですが、本作については斎藤工さんの「何百何千本観なくても この一本だけ観たい そんな作品」というコメントがなんとも印象的でした。
己が生に孤独と違和感を抱える青年と少女の二人が死生観をきっかけに交流を持ち、現実を見つめ直す物語です。
予告や解説等でも引き合いに出される作中のセリフとして、
あかり「死んじゃうと、生きてたことってどこいっちゃうのかな.....」
良「俺の田舎じゃさ・・・・・死んだ者は海に帰るって言われてんだ」
というものが有りますが、作中の総てがそこに収斂しているように思います。
孤独を描いた作品は当然の如く画面も寒々としたものが多いかと思いますが、本作は"水"が頻出しますがそれすらもどこかしら暖かく、そのあたりの人を拒むわけではない孤高さが国内外での評価の高さに繋がっているのかもしれません。
なんだかとってもいい
仏ヶ浦の景色バックに静かな時間が流れていて、なんだかとってもいい。映画を見るとついつい余計なことを考えながら見てしまうけれど、2人の世界観にそのまま身を任せているだけで、なんだかとてもいい。少女の声のファンになっちゃう。
便所は汲み取り
アート系作品かと思ってしまった序盤から、ハートフルドラマへ。説明なんてまどろっこしいものは要らない。孤独を感じている青年・良からすれば、都会で見つけたたった一人会話の相手。街並みが海に見えるというところが絶妙でもあった。一方の11歳の少女かがりは音のない高層マンションの一室で文鳥のさえずりに癒やされていた。
鳥の死骸を扱ったことから、ちょっと間違えればホラー、エロチックなものになってしまうだろうに、純粋な心を持つ主人公のおかげでファンタジーさえ感じてしまう。下北半島のロケ地もいいし、良の母親(佐々木すみ江)の演技がとてもいい。
好きなシーンは廃校となった学校の音楽室。壊れたオルガンを弾いて目眩を起こすところが不安定さを醸し出していた。
まさしく掘り出し物の作品だった。木内みどりも佐々木すみ江も入浴シーンがあるし、少女かがりも一緒に入ってる。少女ヌードシーンがある映画ってのは何故か埋もれちゃうんですよね(勝手に思ってます)。
煌めきの中に漂う危うさ
その時代の古さがしっかりと出ているのに、スタンダードの映像が非常に美しくて、映画特有の普遍性を強く感じた作品。
明瞭な映像の中に挟み込まれてくる、生の危うさ、危うい性…。決してよい内容でもよい演出でもないけれど、ぎこちなくて不自然な関わり合いが、目を離すことができないような緊張感を生み出しているような印象。
東京の風景、東北・靑森・下北半島の風景、その描写がことごとく見事なものだが、それに反して登場してくる人々の描かれ方は決して美しくも気持ち良いものでもない。人間臭いところが丸出しになっているように見えるのだが、不思議と嫌悪感はなくて、むしろ愛おしく思えてくる。
どろどろとした中で光輝くピュアなもの─その輝きはあまりにまぶしくて、まぶしすぎるが故に、すぐに消えてしまいそうな刹那…。短いスパンで考えれば幸福感を強く感じるけれど、長いスパンで感がると悲劇的な思いになってしまう。
恋しさと せつなさと 心強さと
仕事で忙しい母親とふたり暮らしの少女、
田舎から上京しビルのガラス拭きをしている青年、
孤独なふたりの出会いからの切なさと暖かさが波打つヒューマンドラマ、
都会と田舎の交差す鮮やかなる描写、
約30年前の1987年製作というのは驚き、
監督・主演少女も素晴らしい。
キネカ大森で「ゴンドラ」を観た。上映終了後、後ろの出口から聞き覚え...
キネカ大森で「ゴンドラ」を観た。上映終了後、後ろの出口から聞き覚えのある野太い声で”監督の伊藤です”との挨拶が。ええっ、伊藤智生監督ってTOJIRO監督だったのかと、もう訳が分かんないほどビックリ。映画は30年経っても瑞々しく、特に後半の田舎の描写が美しくフィルムの質感が実にいい。少女の閉ざした心が溶け出して、みるみる可愛くなっていくのだ。
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