劇場公開日 1980年4月29日

「全体としてはテレビ特番を観たという印象」五番町夕霧楼(1980) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0全体としてはテレビ特番を観たという印象

2020年1月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

正直、残念な気分です
同じ金閣寺放火事件を題材した、市川崑監督の炎上と比較するのは酷というものですが、比べたくない出来と言わざるを得ません

松坂慶子は美しい
娼婦にも見える
しかし、その向こうにある丹後の寒村の極貧の中で不幸を背負って育ってきた子娘の姿形が透けて見えて来ないのだ
華やかな都会で苦労せず育って来たようにしか見えない
演技力の問題ではなくて配役の間違いに責任があると言うべきで、彼女は断るべきだった
単に愛の水中花の大ヒットでキャスティングされたにすぎないと思える
ただ本作の後、彼女は立て続けにヒロイン役を得るようになったのだから出演の意味はあったのは確かなのだが

奥田瑛二の櫟田も炎上での市川雷蔵のひどい劣化コピーでしかなかった

三島由紀夫と水上勉の原作に於ける放火動機の違いに由来するものだが、なんとも薄っぺらい
不愉快ですらあった

その他の俳優達も大して見るべきものもなく、大味な演技しかなく興醒めする瞬間が幾つもある

脚本もくどくぎごちない
演出もきつい言い方になるが臭い

肝心の金閣寺の炎上シーンもクライマックスとしての映像の美しさ、特にカラーを活かしての映像美を期待したのに拍子抜けのするようなものでしか無かった

全体としてはテレビ特番を観たという印象だ
炎上の足元にも及ばないし、比較すらして欲しくない

あき240