「【落魄すれど、人情ある小早川家の人達の姿を描く中で、人間の生の儚さと、自由意思で生きる女性の逞しさを描いた作品。小津安二郎監督と原節子さんとの最後の作品でもある。】」小早川家の秋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【落魄すれど、人情ある小早川家の人達の姿を描く中で、人間の生の儚さと、自由意思で生きる女性の逞しさを描いた作品。小津安二郎監督と原節子さんとの最後の作品でもある。】
■代々造り酒屋の小早川家も大資本の波に押され、当主の久夫(小林桂樹)も頭が痛い。それに加え、亡き長男の嫁・秋子(原節子)の再婚話や末娘・紀子(司葉子)の結婚話と悩みは尽きない。
その一方、義父・万兵衛(中村鴈治郎)は久夫に当主の座を譲ってからは自由気ままな毎日を過ごしていて、京都の愛人の家に行ったりしている。
◆感想<Caution!あまり内容に触れていません。)
・今作は、一応原節子さんが主役という事になっているが、出演シーンは少ない。これは勝手な憶測だが、小津監督と組んだ前作「秋日和」以降、当時のライトの強烈さで白内障が悪化した事で、半年以上休養してから今作に臨んだからではないかと思う。
・更には、役柄が「秋日和」と同様に未亡人であり、名前も秋子と同じである。何となくだが、原さんの表情が冴えない気がするのだが、調べたらこの頃から原さんは、邦画への失望を口にし、引退を考えていたようなのである。
”最近の映画は、ギャング映画やアクション映画やオネエチャン映画が多くなって・・。映画は矢張り美しいモノを与えるモノだと思う。”と言う言葉に如実に表れている。
・驚くのは、まだ40歳の原さんが台詞とは言え、”もう、お婆ちゃんだから・・。”と二度言い、その度に司葉子演じる末娘・紀子から窘められている。
美しさに陰りは無いのに、時代なのだろうか。
女優さんは、30代後半をどう乗り越えるかというのが課題であると現代でも言われているが(マア、失礼な話ではある。)当時は時代的にもっとそういう志向が強かったのだろうなあ、と少し寂しく感じた作品である。
<そして、今作から数年後、原節子さんは映画界を引退する。そして、隠遁生活に入り世間には殆ど姿を現さなくなったのは、周知の事実である。
けれども、それはこの稀代の大女優さんの見事な幕引きではないかな、と私は思うのである。何しろこの方の主演作の本数は、現代の女優さんの数十倍はあるのだから。
そして、亡き後もその名は燦然と人々の心の中に残っているのであるのだから。>
共感ありがとうございます。
原節子さんはじめ、この頃の女優さんは大人を演じる事が当たり前ですよね。現在の若手女優さんが30近くなっても学生を演じてるのと真逆です。また肉感というか、スクリーン内に居るなというみっしりした存在感を感じますね。
今作はコメディ部分が笑えましたが、川とか烏とか不穏な匂いも漂わせてましたね。