「画面に溢れる粋(いき)、そしてメメント・モリ」小早川家の秋 pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
画面に溢れる粋(いき)、そしてメメント・モリ
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「午前十時の映画祭」で鑑賞。
面白かった。
今回も「なんてことのないお話を、ここまでじっくりと見せてくれるか」と感心。さすがです。
画面に溢れる「粋」。
まず、中村鴈治郎の演技と、小津の巧みな演出が素晴らしい。
セリフの絶妙の間、ギリギリのタイム感。とくに氷屋の場面に感銘を受けた。
それから、ヴィジュアルそのものが粋である。画面がビンボー臭くない。
団扇や浴衣のデザインが視覚的に心地よい。もちろん名優たち(豪華キャストだなぁ)の姿も美しい。
物語の最後に我々に送られる小津のメッセージ。
そこにぼくは小津の諦観(〈本質を見きわめる〉〈悟りあきらめる〉という二つの意味においての諦観)を感じとった。けっきょく彼はこの映画で世の無常を描きたかったのだろうか。
死の象徴である煙とカラスが繰り返し映し出されるところは、ちょっとくどいなという感じがしないでもなかったが……。
この作品も、平明で、清潔で、品があり、ユーモアがある。
そして、本作も「人間」がしっかりと描かれている。
それが映画芸術においてもっとも大切なことだ、と教えてくれているようである。
時代を超えて評価されるのには、それだけの理由がある。――今回も、そんなことを感じました。
また、タイムスリップして昭和の懐かしい空気を胸いっぱいに吸ったような気分にもなった。
つねが万兵衛の亡骸を扇ぐシーンが印象的だった。
それから、秋子の「品行はなおせても、品性はなおせない」というセリフがこころに残りました。
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