「心に刻まれる作品」この子を残して はる坊さんの映画レビュー(感想・評価)
心に刻まれる作品
まず良かった点を。
永井一家がクリスチャンであったので、独特な精神描写がありました。おばあちゃんや教会員が神を信仰し続ける一方原爆を落とされたことに戸惑う場面は印象的です。永井先生はかなり信心深い方のようで、それに対して一貫して「戦争を終わらせる為に神様が私たちを使って下さった」という姿勢を見せています。信心深いクリスチャンとしては自然ですのでこれは良いポイントだと感じました。是非信仰と原爆の間で揺れる被爆者の心情にも目を向けてください。エンディングでは強烈に頭に残る歌と映像が。衝撃を受ける事は大事だと思いますので苦手な人はビニール袋を用意して寝不足でも良い日に見てください。
一方、不満な点も多いので評価は3にしました。
まず、放射能と放射線を混同している点です。永井先生は放射線技師ですし、放射線による原爆症の描写が多いのにも関わらず間違われているのは残念です。
また永井先生が原爆投下直後に「これは原子爆弾だ!」と何度も発言されているのですが、これも不自然に感じます。新型爆弾という事以外は一般人が知る由もない情報でしょう。原作の小説をパラパラとめくってみたのですが、見た限りではそういった発言はされていないのですが…?
更に、戦況の悪化を知らないはずなのに「この戦争は負ける」だとか「戦争は間違っている」などと繰り返し発言されるのも不愉快。登場人物ををそんなに美化したいですか。これのせいでかなり説教臭い映画になっています。
また良かった点で挙げた永井先生の「戦争を終わらせる為に神様が私たちを使って下さった」という考えを正しいものとしていることが映画を左翼感がほんのり香る仕上がりにしています。「唯一絶対神で全ての人間を愛してる神が原爆落とすんですねぇ、へぇ。」と思える人がどれくらいいるでしょうか。
高校の修学旅行の事前学習で見ましたが、色々ガバガバなのでエンディング以外は正直学校の平和学習で上映すべきなのか…?と思いました。しかし素地が固まってる人が見る分には十分良い作品だと思いますし、皮肉混じりに本当の平和を考える機会になりました。時々エンディングが夢に出てきます。