古都(1963)のレビュー・感想・評価
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千重子よりも苗子の奥ゆかしさに感動を覚え…
京都観光旅行のガイド本代わりに
原作を読み、
川端康成文学の中では
特に好きになった作品。
旅行の後、映画化作品が3作もあると知って
全てレンタルして、
古い順にこの作品から観ることにした。
内容はほぼ原作通りだったが、
まずは、岩下志麻の一人二役の映像が
60年以上も前の作品としては完璧な処理で
驚かされた。
鑑賞中は、
原作で感じていた京都観光的要素よりも、
徐々に登場人物の性格描写に
興味のウエイトが移っていくのを感じ、
主役の双子や千重子の両親も含め、
なんと奥ゆかしい日本人的気質の
登場人物に溢れた作品なのだろうと
感じさせられ、
これが川端文学の真髄の一端なのかも
と考えされられた。
そんな中でも、原作を読んだ時には、
そこまでは感じなかったが、
この映画作品を観て、
川端康成は千重子を主人公にしながらも、
苗子が、
千重子をいつまでもお嬢さんと呼んだり、
苗子に結婚を望む男性は千重子の身代わり
・幻を見てのアプローチであると語ったり、
千重子の生活環境を壊したくないと
思い遣る苗子の人間像の中にこそ、
奥ゆかしい日本人の心を投影
させていたように感じ、
その生き様に感動を覚えた。
さて、1980年の山口百恵版はどうだろうか。
千重子・苗子の人となりは
どう描かれているだろうか。
この岩下志麻版との比較が楽しみに
なってきた。
全編に日本の美が詰まっています これほどの美は、21世紀の技術で鮮明に蘇らせなければならないものです
今日10月22日は、本当なら本作にも登場する時代祭の日でした
残念ながらコロナ禍の為中止でした
1963年1月公開、カラー作品
川端康成の新聞連載の長編小説が原作
1961年10月から翌1962年1月にかけて掲載され、1962年6月に刊行されました
ですから大変速やかな映画化です
それだけ注目と話題を集めていたことが分かります
連載中の11月に、川端康成は文化勲章を授与されています
ノーベル文学賞の受賞は、この6年後の1968年のことです
川端康成といえば「雪国」が有名ですが、ノーベル文学賞の対象作品は本作の方です
内容は、古都京都を舞台に失われてゆく日本の美をとどめるというもので、さながら京都の観光ガイドの如く名所や祇園祭や時代祭、古い町並み、煌びやかな着物、そして美しい日本女性が描かれています
そして双子の姉妹、現実と幻、現代の日常と過去の伝統、リアルとファンタジーの相克がテーマです
これを忠実に映画化したのですから、外国人には大変好評を博するのは当然です
1964年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるほど
因みに受賞はフェリーニの「8 1/2」でした
これで世界的に話題をよんで、1965年には早くもドイツ語訳が出版されておりノーベル文学賞につながったという流れかと思われます
つまり、川端康成のノーベル文学賞受賞に本作は一役かっていたのかも知れない作品なのです
撮影は1962年、約60年前の京都です
様変わりしてしまって、一角としては在っても、映画の中のように通りごとの町並みは僅かしか残ってはいません
清水寺、平安神宮などはもちろん変わらずそのままです
街中でも四条大橋の西詰のいづもやのネオンがみえます
千重子の室町の着物問屋の店は京都シネマの近くで今もあるようです
失われていく日本の美
まだまだ残っているようで、本作を観ると失われたものの多さにも気付かされると思います
コロナ禍で祇園祭も2年連続で中止でした
本作の映像を観ると、着物や浴衣姿の多さに驚かされると思います
京都の言葉もいまはもうすっかり薄まってしまいました
今年は秋の深まりが早いようです
コロナ禍も収まりつつあります
今年は紅葉を見に行けそうな気がします
本作の中の会話のように北山の里にまで足を伸ばしてみたくなりました
墓参りもしたいし、馴染みの店にも久しぶりに顔を出したいものです
劇中の森嘉の豆腐で湯豆腐を食するシーンをみたらなんだか急に行きたくなりました
10月なのにこう冷えるのですから、冬も早そうです
終盤、苗子が室町に泊まり来た夜
千重子と苗子が二階に上がった後、老夫婦が炬燵で会話をするシーンが何故か染みました
時雨?みぞれ?
淡雪やおへんの?
雪?
静かですね、雪ゆうほどの雪やのうて、ほんまに細かい淡雪
まだ薄暗い早朝、その淡雪が白く降り積もった真っ直ぐな通りを苗子が小走りに去っていくラストシーンにつながります
カメラがティルトアップして雪の町並みを美しい構図を作るのです
そして祇園囃のようで、ガムランのような独特の音楽が響いて深い余韻を残して終わるのです
この音楽は前衛音楽のような趣があり、冒頭から全編のムードを支配しています
千重子が父に買って来たクレーのアブストラクトな(抽象画)画集、そこからインスピレーションを得た千重子の為の帯の図案
そのエピソードと相似形にした音楽なのだと思います
音楽は、前衛音楽家の武満徹
さすがです
劇中の千重子と苗子は20歳
岩下志麻22歳です
小津安二郎監督の「秋刀魚の味」は1962年11月18日の公開ですから、撮影は「秋刀魚の味」撮了後すぐだったのでしょう
それにつけても、岩下志麻の美しさったら!
形の良い高い鼻筋、気高い額、気品のある眉
映画の中の男達と同様に穴があくほど画面の中の彼女をみつめていました
そしてあの着物!帯!
全編に日本の美が詰まっています
これほどの美は、21世紀の技術で鮮明に蘇らせなければならないものです
次の60年にバトンをつながなければなりません
川端康成の原作も、映画の本作も、失われつつある日本の美を後世に伝えるためのものです
今バトンを持っているのは私達なのです
映画関係者の皆様
是非、本作撮影、公開60周年を記念して、4Kリマスター修復版の発売を切にお願い致します
そして願わくば映画館での上映をお願い申し上げます
岩下志麻さんが綺麗
気になって見てみました。岩下志麻さんが一人二役で演じていました。姉妹が会うシーンは同じ人間なのに別人にみえます。姉も綺麗ですが妹の方がもっと綺麗に見えました。ナチュラルメイクでしたが内面から醸し出す美しさなのかうっとりしました。
祭りで全く同じ顔の女性(生き別れの双子の姉妹)と出くわしお互い関係...
祭りで全く同じ顔の女性(生き別れの双子の姉妹)と出くわしお互い関係を築きあげていく。しかし劇中の双子に対する勘違い、姉の面影を自分に求めていると思い込む妹など2人の関係は簡単にはいかない。ラストの雪道を孤独に歩く岩下志麻のロングショットの美しさ。必見の名作。
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