子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎のレビュー・感想・評価
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玉石混交すぎたシリーズの終焉
人気劇画原作のシリーズ完結作。
『大魔神』シリーズの特撮監督として知られる黒田義之が本作を監督。
前作の撮影担当、森田富士郞は黒田監督にとって大映時代の盟友というだけでなく、小学校の同級生だった仲。その森田に代えてシリーズ1~3作の牧浦地志を撮影に迎えた理由は、もともと監督も三隅研次を予定していたからか。しかし三隅は「こんな西部劇みたいなの」と難色を示して本作の監督を拒否したそう。でも、そんなこと言ったら3作目『死に風に向う乳母車』だって…。
1作目から脚本を担当した原作者、小池一夫もシリーズから撤退。
若山富三郎以外のキャストも脇役俳優ばかりで、全体的にシリーズの終焉を予期させる陣容。
膳所藩大番頭、剣持と称して頭巾姿で現れる武士の正体が拝一刀に暴かれるより先に、散々『七人の侍』(1954)観てきたせいで、目元だけで木村功だと分かってしまう。
原作が継続中だったので、一刀と烈堂の決着はつかず。TVシリーズ(萬屋錦之介版)で金田龍太郎の怪演が話題になった阿部頼母も本シリーズには登場せず。
本作の香織と梓は2作目に登場した鞘香のエピソードを分散させたもの。そのため、一刀が大五郎を肩車したせいで香織がお手玉の剣を躊躇する動機に説得力が感じられない。
烈堂同様、配役を代えてでも鞘香を再登場させ、彼女の最期でシリーズを完結するべきだったと思う。
箱車を橇に仕立てた雪原での戦闘シーンは主演・若山のたっての希望だったそうだが、そこまで拘った理由は何?ひょっとして『殺しが静かにやってくる』(1968)見たから?!
シリーズ全作を見終えた上で、あらためて個別に評価するなら、1、2作目は凡作、4、6作目は珍作、5作目を快作と位置付けたい。
何よりも残念なのは、シリーズ全体がスプラッターやカルト映画という色眼鏡で見られるせいで、時代劇映画史上稀に見る名作『死に風に向う乳母車』が正しく評価されずに日の目を見ていないことだろう。
映像表現上の制約がやかましくなった現在、原作に忠実なリメイクの可能性はほとんど皆無。本シリーズの地上波での放送なんてのも、まず無理だろう。
無料放送で全話まとめて視聴できたのは僥倖というべき。BS松竹東急には感謝の言葉しかない。
6月末で放送終了するのはやっぱり惜しい。何卒ご再考願えないものか…。
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