「怪獣プロレス ゴジラ・キングシーサー組vsメカゴジラ」ゴジラ対メカゴジラ ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣プロレス ゴジラ・キングシーサー組vsメカゴジラ
メカゴジラ初登場にしてメカゴジラの為の映画。
まー、豪快な脚本(笑)。
主人公兄弟のお兄さんが担当している工事現場からたまたま古大怪獣・キングシーサーの封印を解く像が出てきたり、主人公の叔父さんがたまたま考古学者だったり、弟が鍾乳洞でたまたま拾った金属片がたまたまメカゴジラの装甲だったり、知り合いにたまたま物理学権威の博士(しかもノーベル賞受賞者)が居て拾った金属片の分析を頼めたり、博士はその金属片がスペースチタニウムだと断言できたり…
と、まーこんな感じ(笑)
地球侵略を企むブラックホール第三惑星人は葉巻を燻らせてブランデーを嗜むおっさん(嗜好品に葉巻とブランデーがある宇宙人…)だし地球人の博士にメカゴジラを修理させるために娘を拉致ったり(メカゴジラって地球人が直せる科学力なのか…)宇宙人というより北朝鮮のスパイみたいだ。(そもそもブラックホールに惑星って存在できるのか…?)
そのブラックホール第三惑星人の真の姿もあー、猿の惑星見たんだね、と製作側の映画視聴履歴も分かる。
絶対絶命のピンチは全てインターポールが間一髪で救ってくれるし(都合4回、間一髪で救われる)、キングシーサーを目覚めさせる歌がどうも不倫してる人妻が間男に夫が帰ってくる前に帰ってと言ってるような艶っぽい歌な上、この歌を2番まで歌わないと目覚めてくれないキングシーサー…。(キングシーサーもゴタゴタが終わったらしっかり家に帰るのだが、もう居場所もバレて伝説でもなんでも無いだろ(笑))
また沖縄で戦っていたかと思えば東京湾、富士山嶺と「あれ?今、ここどこだっけ?」となるのもたまにキズ。さらにロッキーよろしくゴジラの特訓パートもある。
そして!本物のゴジラが初登場する場面は大爆笑もの(どっから出てきてんだよ!地下道とかあんの!?あの倉庫で働いている人、なんか地盤緩いなとか思ってたかも)
とまあ中々、現代では見れない凄まじいドラマパートでした(笑)
ところが!!この作品、特撮パートが凄え良い!!
特に東京湾石油コンビナートでのメカゴジラvsゴジラ戦、ここは凄かった!絶対今じゃ許可でないだろって量の火薬を屋内スタジオで使ってる。しかもロケーションが昼間の峰とかじゃなく夜の湾岸なので炎が冴える。
ラストのゴジラ・キングシーサー組とメカゴジラの一戦もメカゴジラのギミック、ミサイルや光線のエフェクトと落ち着きの無い編集でガチャガチャ見せてくれて面白かった!(メカゴジラの火力一斉解放が良かった!!)
当時、映画製作費の捻出が厳しくなっており予算が掛けられなかったそうだ。確かにドラマパートは安っぽく見えるのだが特撮パートはベテランのスタッフの工夫で少ない予算ですごい迫力。
あと本作にウルトラマンのダダの回に似たような場面があるのだが、閉鎖された空間の中で人間サイズの宇宙人がくぐもった声を上げながら死角から襲ってくるのって怖い。これは現代でも十分通用する演出だと思う。
もうメカゴジラというアイデア一発をどうやって見せるかに全振りしていて清々しい。オープニングタイトルや音楽も軽快で良い意味で軽薄な怪獣映画だ。(監督は音楽が伊福部昭では重くなるのであえて別の方に音楽を依頼したそう)
本作のヒットでゴジラ映画の観客動員数が上向きになり続編も作られた。続編の「メカゴジラの逆襲」というタイトルにゴジラの名前が無いことから如何にメカゴジラが当たったか分かる。しかし続編の興行成績が芳しく無かったことからゴジラシリーズは1984ゴジラまで一時休止になる。
これはゴジラを子供向け娯楽映画として製作することの限界を意味していたのでは無いかと思う。
昭和の子供向け映画だった頃のゴジラ映画がどんなものだったか分からせてくれる、昭和からやってるくたびれた町中華の店でラーメン・チャーハンセットで腹一杯になったような映画です。