「互いの英知を結集した大戦争の色褪せぬ魅力」怪獣大戦争 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
互いの英知を結集した大戦争の色褪せぬ魅力
ゴジラ・シリーズ第6作。
DVDで5回目の鑑賞。
怪獣王ゴジラがついに宇宙へ進出した。初めての宇宙でやったこととは当時流行していた「シェー!」であった。なんともはや。ここからシリーズの転落が始まったのかもしれない。
X星人の登場が最大のトピックスだろう。シリーズ初の侵略宇宙人である。細身のサングラスを掛け、独特なユニフォームを着用している。カクカクした動きから醸し出される異星人感の演出が巧みだ。多くの人が想像する「宇宙人」のスタイルそのもので、X星人が原点なのかもしれないと思わせる。何より統制官役の土屋嘉男氏の演技がやたらに上手い。宇宙人役をやらせたら土屋氏の右に出る者はいないと思う。
地球に友好的な雰囲気を醸し出しながらゴジラ、ラドン、キングギドラをまんまとその手中に収め、地球植民地化宣言をして来るのだから、演技達者で憎たらしい限りである。
彼らは電子計算機の指示通りに全ての行動を決定すると云う徹底した管理社会を築いている。AIによる管理社会の問題を先取りしていたとも解釈出来、先見の明に舌を巻いた。
宇宙飛行士のグレンとX星人女性・波川の悲恋が切ない。電子計算機の指示に従わず愛に従って生きようとした波川。その姿は人間にとって最も尊い行いではないかと思う。
正直なところを言えば、大人になって観るとふたりの関係の掘り下げが足りないと物足りなさを感じる。そこまですると趣旨が変わると云うことは重々承知してはいるのだが…
ゴジラ、ラドン、キングギドラが暴れまわるが、何故か地方都市を中心とした破壊行動で拍子抜けである。地球侵略なんだから思い切り大都市を攻撃すれば良かっただろうに…
前年(1964年)に2本もゴジラ映画をつくった余波なのか、はたまたこの頃から特撮映画の予算が削られ始めていたのか、ライブフィルムの使用も散見され、かなり寂しい。
そんな中で迎えたクライマックス、新兵器「Aサイクル光線車」を使ったX星人撃滅作戦は、伊福部昭の勇壮な「怪獣大戦争マーチ」も相まって、屈指の名シーンに仕上がっている。
音楽に合わせた巧みな編集がやられっぱなしだった人類渾身の反撃に興奮が高められ、「未来に向かって脱出する…」と呟いて自爆したX星人の末路に不思議な余韻が残った。
人類によるX星人退治がメインのため、怪獣対決はほんの数分だ。ゴジラは完全に添え物だったが致し方あるまい。
本作が怪獣映画に留まらぬ魅力を放つ理由は、互いの英知を結集した大戦争にあるだろう。その見応えは色褪せない。
[追記(2020/12/19)]
公開55周年と云うことで記念鑑賞した。
[以降の鑑賞記録]
2020/04/16:Amazon Prime Video
2020/12/19:Netflix
2021/12/31:4Kデジタルリマスター版(日本映画専門CH)
2025/05/30:Ultra HD Blu-ray
※修正(2025/05/30)
多分、水に乏しいX星人たちはさほど大勢は居ないのでしょう。水野2号たちは地球に連れて来られて・・ミステリアンじゃねえか! だから艇長も浮気したのか?!(同じ顔だから)