「「キングギドラ」初登場ですが本編(ドラマ)パートも秀逸でしたね!」三大怪獣 地球最大の決戦 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
「キングギドラ」初登場ですが本編(ドラマ)パートも秀逸でしたね!
ゴジラ生誕70周年記念上映「ゴジラ・シアター」もいよいよラスト第4弾。
有終の美を飾るのは『三大怪獣 地球最大の決戦 4Kデジタルリマスター版』(1964)。
今回もTOHOシネマズ日比谷さんの大スクリーンで堪能。
『三大怪獣 地球最大の決戦 4Kデジタルリマスター版』(1964)
シリーズ第5作で「ラドン」「モスラ」と共にシリーズ最大の人気悪役「キングギドラ」と戦うのが目玉ですが本作も本編(ドラマ)パートがとにかく秀逸でしたね。
主人公は当時佐藤允氏らと「スリーガイズ」として売り出し中の夏木陽介氏。
妹役に星由里子氏、博士役に名優志村喬氏、その他平田昭彦氏、佐原健二氏と東宝特撮の常連に加え、端役でも大村千吉氏、沢村いき雄氏、天本英世氏、加藤春哉氏と個性豊かな配役が多く、改めて日本映画黄金期の充実ぶりが窺えますね。
そのなかでも太古地球に飛来した金星人の本能に目覚めたサルノ王女役を演じた若林映子氏。
当時としては珍しい日本人離れしたエキゾチックな顔立ちが魅力で若きデヴィ夫人にそっくり。後年『007は二度死ぬ』でボンドガールにも抜擢され国際女優の仲間入りをしました。本作でも「金星からの預言者」という難役を違和感なく演じておりました。
そして「小美人」のザ・ピーナッツ(伊藤エミ氏、伊藤ユミ氏)の圧倒的な歌唱力にも驚かされました。
本編ストーリーは公開当時リバイバル上映で再ヒットしていた『ローマの休日』をベースにしているようで、確かにラストのボディーガードの夏木氏と王女の別れは『ローマの休日』のオマージュでしたね。
因みに金星人から来た預言者とキャラ設定も、当時「自分は金星人」だと主張する人がメディアを騒がしていたそうで、脚本の関沢新一氏が当時の流行や世相をきちんと作品に織り交ぜていることがうかがえます。
特撮パートの大きなポイントは「ゴジラ」の擬人化。以降のシリーズの方向性が決定づけられた点でしょうか。
背景画が富士山麓になったのは海外輸出を意識したそうですが、建物が並ぶミニチュアセットと違い怪獣たちの巨大さは感じられませんが戦いの自由度は高まった感じでしたね。
そもそもゴジラもラドンもモスラも単独作品として制作され、後年他の怪獣たちと戦うことを想定しておらず技斗の演出は大変だったと思いますね。
目玉のキングギドラは3つの首が各々意思を持って別々に不規則に動く操演はお見事でしたね。
「ゴジラ・シアター」で『ゴジラ』(1954)、『キングコング対ゴジラ』(1962)、「ゴジラVSビオランテ』(1989)と改めて大画面で拝見しましたが、本編パートは公開当時の世相や話題、流行、社会問題が色濃く出され、ゴジラの描かれ方も時代の要請を反映してましたね。