「ゴジラは悪役から解放された」三大怪獣 地球最大の決戦 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラは悪役から解放された
これは面白い!傑作です
過去の怪獣映画の中間決算ともいうべき作品です
キングギドラという絶対悪を敵にする事で、相対的にゴジラもラドンもモスラも地球怪獣という括りになり、人類の味方であると再定義されたのです
これは見事な設定です
これによりゴジラは悪役から解放されたのです
今後は悪役怪獣が出現すれば、正義の味方として登場可能になったということです
つまりシリーズの生命を長く保つことに成功したのです
このキングギドラの造形が特に素晴らしい
地球の古代生物由来から解放された、造形上の自由を得て従来の怪獣像からはかけ離れた宇宙怪獣の形
それでいて伝説の西洋ドラゴンや八岐大蛇をモチーフにしておりその禍々しいさが一目でわかる姿形なのです
そして金色!
強さ、それも最強である、怪獣のキングらしさが雄弁に表現されています
同じ宇宙怪獣でもドゴラのような不定形怪獣では、不気味さはあっても悪魔の化身としての具体性が足らないのです
その上で、ドラマパートもキングギドラとは何かを伝えるために構成され、さらに誰もが馴染みのあるローマの休日をモチーフにすることで飽きさせない工夫をほどこしてある
黒澤明監督の赤ひげの製作遅延で急遽正月映画に繰り上がったにしては、本当に良くできています
ゴジラシリーズは通常は1年間隔ですから、本来なら翌年のゴールデンウィーク公開予定だったはずです
本多猪四郎監督と黒澤明監督は共に巨匠山本嘉次郎監督の門下生で、長年の親友なのです
ですから、半年繰り上がったスケジュールを頑張ったのだと思います
キングギドラを背景に、前景に石の鳥居や赤いアーチ橋のカットは目の覚めるような絵です
上空を通過して松本城の瓦が飛び散るカット、反重力光線が縦横に飛び交いビルが破壊される様も従来の破壊シーンをさらに進めたものになっています
有名な三大怪獣会議シーンや怪獣同士の戦いもユーモラスなカットを交え子供達も痛快に楽しめる工夫が凝らされています
怪獣映画の傑作だと思います