原子力戦争 Lost Love

劇場公開日:

解説

原子力発電にスポットを当て、青年ヤクザが目撃した、ある港町の原子力発電所をめぐる賛成派と反対派の利権争いを描く。田原総一郎原作の同題名小説の映画化。脚本は「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の鴨井達比古、監督は「祭りの準備」の黒木和雄、撮影は「ある機関助士」の根岸栄がそれぞれ担当。

1978年製作/106分/日本
配給:ATG
劇場公開日:1978年2月25日

ストーリー

東北のある港町の駅に坂田正首が降りたった。坂田はこの町へ帰ったきり戻って来ない望を連れ戻しにやって来たのである。望の実家を訪ねた坂田は望の父・繁に彼女は帰っていないとつめたく追い帰されるが、玄関に望の傘があるのを見逃さなかった。その夜、坂田は地元の新聞記者・野上と知り合い、バーに誘われる。野上はそのバーのマダム・夢子と同棲していた。彼は、原子力発電所で最近何かあったらしいことをかぎつけ、スクープしようとしていたのだった。野上は坂田に、十日程前、近くの海岸に若い男女の心中死体が上り、男は山崎という新婚の原子力発電所の技師であるのに、女はその妻でないことが不思議だと話す。坂田は心中した女が望ではないかと町の人を訪ね歩き、遂に望の妹・翼から彼女の死を聞き出した。しかし、望が心中する理由が思い当らない坂田は、山崎の妻・明日香を訪ねた。坂田は、自分のために体まで売ってかせいでくれた望が心中するわけがない事や、殺される理由があった山崎と心中に見せるために望は殺されたに違いないと、明日香に話す。明日香が坂田に、山崎のいなくなった夜の事を話し始めた時、警察官が踏み込んで来て坂田は逮捕されてしまった。しかし、坂田はすぐ自由の身となる。町で若い男たちに札束を渡された坂田は、町から引き上げてほしいと言われ、駅まで見送られる。坂田は秘かに町に戻ると、山崎の失踪した夜、彼を迎えに来た電力会社の組合員の小林と、約束した場所に行くが、数人の男に襲われ、重傷を負う。その頃、原子力研究の権威者・神山教授が、何故か秘かに原子力発電所を訪れていた。小林の首吊り死体が松林で発見された事から、野上は坂田にこれ以上深追いしないように注意する。しかし、坂田は明日香の不可思議な行動を追い始める。それが、自分の死を招く結果になるとは、坂田には知るよしもなかった。原子力発電所という、この町にはあまりに大きな影響をあたえた怪物が、静かに体を動かし始めていると、坂田は確信した。

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映画レビュー

3.5"チャイナ・アクシデント"

2022年10月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

萌える

田原総一郎のドキュメント・ノベルである本作は社会派サスペンス物としてロマン・ポランスキー監督、ジャック・ニコルソン主演の『チャイナタウン』や『ウィッカーマン』を意識しているような、山口小夜子はフェイ・ダナウェイをイメージしたファム・ファタール感が漂う謎めいた女を演じ、若かりし頃の風吹ジュンは杉咲花みたいな可愛らしさ。

バディ物として『大統領の陰謀』が如く権力の闇を暴く物語かと思えば、あまりにも無力過ぎるチンピラ上がりのヒモ男、力に抗えない腑抜けになった新聞記者、福島第一原子力発電所に殴り込みなゲリラ撮影に原田芳雄が立ち向かう、あまりに無謀で凄まじいリアルな映像がドキュメンタリーとして何が起こっているのか唐突で戸惑ってしまう。

呆気ないラストは驚愕でありながら冷たく突き放す残酷な虚しさが、アメリカン・ニューシネマを引き摺る70年代後半の日本アート・シアター・ギルド。

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万年 東一