結婚のすべて

劇場公開日:

解説

「新婚七つの楽しみ」の白坂依志夫の書き下ろし脚本を、新人第一回の岡本喜八が監督し、「二人だけの橋」の中井朝一が撮影した風俗喜劇。主演は「大当り狸御殿」の雪村いづみ、山田真二、「氷壁」の上原謙、「葵秘帖」の新珠三千代、「女であること」の三橋達也、「母三人(1958)」の仲代達矢など。

1958年製作/84分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1958年5月26日

ストーリー

--現代はセックスの時代か? 土井康子は姉の啓子夫婦の生活ぶりが気に喰わない。天気の日にも傘を持ち歩く大学助教授に、よく啓子がガマンしていると思う。兄の甲一郎も平凡な見合結婚をした。康子はモデルでバイトしながら“素顔座”の研究生をやっている。芸術ズイているのだ。私、だんぜん恋愛結婚するの。啓子の夫三郎の教え子、浩にあってグッと好きになった。が、彼は表は真面目な学生だが、夜はバーのバーテンをやっている。啓子のホームボディぶり(賢く、健康で、コケットな家庭婦人ぶり)を見た“新女性”編集長古賀は、彼女を記事にしようと追っかけはじめる。康子は浩と逢いびきし、接吻した。その下宿へ行くと、彼はその下宿の女といやになれなれしい。怒って帰ろうとしても、止めようとさえしない--せっかく、すばらしい恋愛結婚をして、情熱的な結婚生活をする気になっていたのに。啓子は古賀の誘いを断りつづけていたが、若い人たちを見習う気になり、古賀について、結婚相談所や、花嫁教室を見て回る。その帰途、彼と酒をのみ、ダンスをした。彼から誘惑されかけ驚いて逃げ帰った啓子は、夫にウソをついた。町で康子さんに会いましたの。ところが、康子は姉に会いに二階に来ていたのだ。彼女は浩の気持をもう一度確かめに行き、散々からかわれて、ひどく興奮してやってきた。彼は結局ひどい女たらしだった。--三郎は、啓子のウソをそのまま見逃す。啓子は、気づいて、夫にわび、二人は和解し抱擁する。それを見て、康子は彼らを理想的な夫婦だと思うようになる。古賀も啓子をあきらめ、その契約結婚(?)をしている妻ともう一年、契約を延期する。--啓子夫婦の上に、また新婚時代がやってきたようだ。康子は、父の会社の社員で、将来見合いをする予定の青年のところへ会いに行き、早速議論をはじめた。その二人の姿が都会の騒音の中を遠ざかっていった--。

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映画レビュー

4.0やっぱり日本がNo.1…?

2022年11月7日
iPhoneアプリから投稿

『日本のいちばん長い日』『独立愚連隊』等で有名な岡本喜八のデビュー作。欧米式の軽妙洒脱なハイテンポコメディを巧みに再現している。特に冒頭部のまくし立てるようなナレーションとそれに合わせて目まぐるしく切り替わるカットは今見てもスピード感に満ちている。

緩やかな家父長制主義、あるいは無感動な夫婦生活になんとなく閉塞感を覚える姉は、確たる自己を持って自由奔放に振る舞う妹の生き様を羨む。彼女は妹とつるんでいるうちに、妹の知人である胡散臭い編集者に被写体の仕事を持ち掛けられる。彼女はそれを請け負うべきか否か、つまり「家庭」か「自由」かという二者択一を突きつけられ、深く懊悩する。

姉は「イマドキの生き方はこれだ!」と意気込む編集者の男に連れられ、街の風俗をあらかた経験するものの、ロックが鳴り響くダンスホールで愛も情もない抱擁やキスを交わす若者たちの姿に激しい嫌悪を催す。帰宅して夫の顔を見るなり彼女は自身の行いを懺悔する。夫は彼女を咎めることもなく、むしろ「今まで自由にさせてやらなくてごめんね」と自己反省までしてみせる。とはいえここでの夫の改心についてはほとんどプロセスも描かれていないため、急拵えの感は否めないが…

一方で自由奔放な妹は、あらゆる社交界を彷徨した果てに博学秀才で二枚目の男子大学生と恋に落ちるのだが、こいつが一番の食わせ者。品行方正で実直そうなのは表向きだけで、裏では数多の女を都合よく食い物にしていた。

「若いうちに吐き気がするほど恋愛をしとけば、後々になって妻以外の女に興味が湧かなくなる」と言って平然と浮気を肯定する彼の姿を目の当たりにして、妹は怒りと悲しみに打ちひしがれる。そして自分が欧米式の自由恋愛主義者には完全になり切れないことを自覚する。彼女が当初あれだけ小馬鹿にしていたお見合い結婚に活路を見出すラストシークエンスは何とも滑稽だ。

それぞれ異なる文化を持っていたはずの女たちが、欧米的恋愛観に対する拒否感から結局のところ二人揃って日本の伝統的恋愛観へと漂着するという筋立てには、欧米的なるものに対する岡本喜八の危機感のようなものを感じなくもない。本作公開後すぐにあの安保闘争が幕を開けるわけだが、本作にも欧米の政治的・経済的・文化的侵略に対する少しばかりの抵抗の意志があったのではないかと思う。

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