黒の試走車のレビュー・感想・評価
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DVD買いなさい。
要はライバル会社の車の情報を得ようとしているだけなのに、まるで大量殺人テロを企てているかのようだ。このような緊迫感を生み出したのは、まさに脚本ではなく演出。白黒映画の凄みを存分に利用した傑作だ。随所に素晴らしく切れのあるカットが入っている。それらが作品を切れ味鋭いものに磨きあげていた。素晴らしい写真力だ。高松英郎の主演もズバっと決まった。堀の深い顔とぎょろりとした目が、彼らのやっていることの緊張感を異常に高めた。
増村保造の作品はレンタルビデオ店にはちょっとしか置いてなかったので、余り注目していなかった。配信の時代になり、新たな巨匠を発見するなんて!なんてたのしいことだろう。
映画評論家“白井佳夫氏”の解説
映画評論家“白井佳夫氏”がテレビ「日本映画名作劇場」で解説していた録画が残っていたので、その一部を御紹介します。
『今夜は増村保造監督作品「黒の試走車」をご覧いただくことにしましょう。これは昭和37年「椿三十郎」「ブルーハワイ」などが公開された年に作られた大映東京撮影所作品です。梶山季之の出世作のベストセラーを石松愛弘と舟橋和郎が共同でシナリオにし、「曽根崎心中」の増村保造監督が映画化したものです。産業スパイとか企業の謀略とか、こういった問題を初めてドラマの中に持ち込んだこの作品、叶順子、田宮二郎、高松英郎などを主演にして、増村保造監督が、日本的なハードボイルドタッチとでも言いたいような、ダイナミックな演出で映像化しています。当時この作品のチーフ助監督だった大映本社の崎山周さんに窺いましたところ、増村監督は画面の構図を決めるのは監督の責任だと言うヨーロッパ流の考え方で、あらゆるショットを自分でキャメラを覗いて演出したそうです。その辺が増村保造の爽快な映像の秘密なのかも知れません。』
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