狂った果実(1981)のレビュー・感想・評価
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根岸の日活ロマンポルノ時代の傑作
時代がバブルに乗って大きくうねりだした時、そのうねりに乗り切れなかった、もしくは乗ってると錯覚していた若者たちの群像劇。その中にひとりのキャラを立てる事で時代の流れを、流れとして描き切った傑作。
とにかく根岸吉太郎監督の演出力の凄さがよくわかる作品です
感動しました
日活ロマンポルノの最高の傑作の一つなのは間違いありません
終盤の爆発力は空恐ろしいほどです
良い映画を観たという喜びと満足感があります
エロシーンは多くもなく、現代の目からすれば何でもないもので、女性も安心してご覧頂けると思います
本作は超有名な石原裕次郎主演の1956年の同名映画のリメイクではありません
アリスという1970年代に大ヒット曲を連発して活躍したグループの同名のヒット曲をモチーフにした映画です
アリスといっても、21世紀生まれの方には知らない人が多いかも知れません
ほらカラオケで団塊世代の超お偉方がしめに良く歌う曲、昴で有名な谷村新司がいた日本のフォークロックグループです
世界的なシティポップ・ブームの文脈からも外れて今では少し忘れられがちです
この本作のモチーフとなったヒット曲は1980年7月発売
彼らがトップ10に送り込んだ最後のヒット曲でした
本作では主題歌として最後にかかります
歌詞と映画の内容が見事にシンクロしています
ヒロインの蜷川有紀は、あの怖い蜷川幸雄の姪です
序盤こそ演技に首を傾げてしまうのですが、終盤では恐ろしいほどに役そのものに憑依した女性になっています
とにかく根岸吉太郎監督の演出力の凄さがよくわかる作品です
本作は1981年4月公開
名作「遠雷」は同年10月の公開です
わずか半年後のことです
そして大ヒット作「探偵物語」は1983年7月公開
監督の恐るべき才能が本作でビッグバンを起こしたのです
1981年の青春
42年も昔のこと
そんな昔話、老人の回顧趣味だろ?
ところが違うのです
今風に言えばリア充の華やかな青春を送る若者と、底辺で先の見えない将来の中で貧しく暮らす若者の青春
その構造は21世紀でも同じなのです
リア充の若者の青春と非正規でギリギリの生活を送る若者の青春の対比として観ろと、ビシビシと画面から監督のメッセージが時を超えて伝わってくるのです
リメイクされるべきです
【”蒼き性と抑えきれない暴力衝動” にっかつロマンポルノ初鑑賞作品。】
ー 名匠・根岸吉太郎監督のお名前は知ってはいたが、作品は初鑑賞。
出演されている俳優さんも永島暎子さん以外は知らず、申し訳ない・・。
けれども、当時の斜陽化していた邦画の熱量は、十二分に伝わって来た。ー
■昼はガソリンスタンドで夜はぼったくりバーで働く哲夫(本間優二)と、華やかな都会生活を謳歌している千加(蜷川有紀)。ひょんなことから知り合いになった二人はドライブへ出かけるが、哲夫は千加を力尽くでものにしようとしてしまう。しかし、千加はその翌日も哲夫の前に現れて…。
・千加が、翻弄していた哲夫に引き込まれていくシーンや、ラスト、ぼったくりバーを無茶苦茶にした男達を哲夫が包丁で次々に刺して行くシーンは圧巻。
・千加が、それを見ながら”あんな男知らない・・”と言うシーンも良い。
<主演は伝説的暴走族「ブラックエンペラー」の元総長という経歴を持つ本間優二、という事にもビックリ。
蜷川有紀さんって、蜷川一族なんですね‥。そんな事すら知らなかった・・。
シンプルだが、男女の情愛をキチンと描いた作品であると、思いました。>
アリスの狂った果実
パトロンと一晩を過ごし、帰りの駐車場でオナニーしている哲夫を見かけた千加は、彼と別れた後、哲夫を車に誘いいれる。あっけないレイプ。挿入する前に出てしまったように見えた(笑)
その後は千加に振り回される哲夫。「レイプ魔の哲夫くーん!」なんてスタンドの前でふざける知加のために、客の車をぶつけ店長とケンカして失職。やりきれない思いは夜の職場ピンサロで爆発。アニキ分に代わって警官に追われる。その後はなんとなく千加と楽しげにデートしたかと思ったが、実家に連れていかれ、パトロン=養父との関係を知加に聞かされ、後に脅してみたりする。そのうち千加の遊び仲間に紹介されるが、彼らは哲夫の勤めるピンサロへと乱入する。たまたまアニキが留守のときだったため、高額を請求されると暴れ出し、アニキの妻(永島)を流産までさせるほど暴力沙汰。なぜか控室でまた千加をレイプした哲夫。こんな状況でも勃起する若さ・・・
怒ったアニキは逆に殴り込みに行く。もちろん哲夫も包丁を持ってついていくが、二人は逆にボコボコにやられ始め、包丁を取りだし修羅場と化す。
アリスの「狂った果実」をヒントに作られた映画。もちろん最後にはテーマ曲も流れるが、これがまたピッタリくるのだ。精神的なカタストロフィを迎え、人生の再生不可能になるかのような展開は凄い。何事もなかったかのように日課のランニングを始めるが、そこにはパトカーが待っている!なんてエンディングも心地よい。なぜロマンポルノとして作られたのかが疑問に思えるくらいにATG色の強い秀作。
熟しきらぬ果実
Blu-rayで鑑賞。
原案曲(アリス「狂った果実」)は聴いたことがあります。
初めて観た「日活ロマンポルノ」が本作でした。
己を持て余した熟しきらぬ果実が、人生のもどかしさに悶えながら自己の存在を追い求め、彷徨し、ぶつかり合う様が過激な性描写とバイオレンスを交えて描かれていました。
コケティッシュな魅力を放つ蜷川有紀が、その均整の取れた肉体を惜しげも無く披露し、エロティックな中に、刹那的な快楽を貪るような、哀切に満ちた濡れ場を演じていました。
若者たちが、満たされない心を埋めるように体を求め合い、破滅していく姿を、当時の空気感を捉えながらエモーショナルに描いた根岸吉太郎監督の演出が見事でした。
※修正(2023/02/14)
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