「これが最後だ! それは市川崑監督の悲鳴だったのだ」病院坂の首縊りの家 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
これが最後だ! それは市川崑監督の悲鳴だったのだ
これは辛すぎる
市川崑監督も流石に嫌気がさしているのが観ていて伝わってくる
特典映像の、特報や予告編を観ると、盛んに本家東宝の金田一耕助シリーズと訴えている
本作は1979年5月の公開
松竹の「八つ墓村」は1977年10月
東映の「悪魔が来たりて笛を吹く」は1979年1月
競合他社が出す以上対抗するのは営業上当然のこと
しかし立て続けに5作品では、いかな市川崑監督でも厳しい
監督自身も流石に飽きもするだろう
どんなに美味しいラーメン屋でも、5日も連続で通ったら辟易するのは当たり前だ
原作もめぼしいものは残っていない
かなり手を入れて翻案しないと面白いものは撮れないだろうことは監督が一番良く分かっていたはず
なのに本作の原作を選定した
おそらく覚悟の上の自爆だ
本当に終わらせたかったのだろう
犯人の動機は横溝正史の世界に合致している
しかし一般大衆の観る映画としてその動機の原作を選択するのは疑問だ
まして女性客が多いシリーズなのだ
しかも人間関係の複雑さが特徴の横溝正史の作品でも本作は群を抜くややこしさ
序盤の廃屋での婚礼写真、生首の風鈴の二つのシーンはインパクトもあり美しさすら感じる
しかしあとはもう退屈だ
観る根気が続かない
早く終わってくれと念じてしまう始末
これが最後だ!
これは特報と予告編にある宣伝文句
老婆のおどろおどろしい声は耳に残る
しかし本編にはどこにも存在しない
そうでもしないとならなかったと言うことだ
その宣伝文句は市川崑監督の悲鳴だったのだ
草刈正雄は彼を主演に使って、別の誰かが金田一耕助シリーズをやれば良いじゃないかという監督の訴えだろう
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