劇場公開日 1967年7月22日

「本作が東宝特撮のピークだったのかも知れない」キングコングの逆襲 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本作が東宝特撮のピークだったのかも知れない

2020年3月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

1967年7月公開
同年4月からアニメ版のキングコングが日米合作でテレビ放映開始
前年大晦日にはパイロット版も放映されている
ドクターフーも、スーザン、メカニコングすらもそのアニメに登場する

アニメは東映動画の製作なので、メディアミックス戦略で東宝が特撮を撮る訳はないが、企画立案のきっかけにはなったかもしれない
ドクターフー、スーザン、メカニコングは、米国側の要望により取り上げられたものという
結果として連動する形になっている

本作の見所はやはりメカニコングだろう
キングコングとメカニコングの東京タワーによじ登っての闘いは手に汗握る

もちろんメカニコングはその後、メカゴジラに発展する

さて特撮はどうか?
特技監督は円谷英二、特技助監督は中野昭慶
キングコングの着ぐるみの出来は正直レベルは低い、顔の造形、目の動きもしかり
原子力潜水艦エクスプロアー号や搭載ホバーカーの造形も機能と性能からの納得性がなくチープだ
ただ外光の下でのプール撮影も一部ある
また海中シーンも工夫が見られるが、これはアーウィンアレンの原潜シービュー号の特撮シーンを参考にしたものだろう
司令の名前がネルソンなのも原潜シービュー号からの由来だろう
特撮のレベルとしては残念ながら同時期のイギリスのジェリーアンダーソンのサンダーバードには
及ばす負けている
1964年の海底大戦争スティングレイのレベルよりもまだ下かも知れない
しかし、東京タワーでの対決シーンは東宝特撮だけにしか出来ない迫力がある
前回のキングコングは身長40メートル、今回は20メートルの設定でそれだけにミニチュアワークも大変に細かいのだ

ドクターフーの基地も007シリーズの影響を強く受けている
007は本作公開の1ヵ月前の1967年6月に公開されたのが007は二度死ぬで、浜美枝はそのボンドガールだったから大変な旬の女優だった訳だ

東宝特撮の常連俳優の出演は多いが、特筆すべきは天本英世だ
マントを常に纏うその姿はマッドサイエンティストそのもの
死神博士のイメージは既にここにある

本編も面白く、大人も退屈せずに観れるものだ
メカニコングの造形、動き、基地での佇まい、基地から地表へリフトアップされるシーンは、オタクなら痺れるものだろう

1967年3月、4月と他社の怪獣映画の挑戦を東宝特撮は受けた
ガメラ対ギャオス、宇宙大怪獣ギララ、大巨獣ガッパだ
本作はそれらの挑戦に対する、同時期に製作していた東宝特撮の回答だ
特撮レベルも本編のレベルも断然上だ
横綱だ

しかし世界のレベルで見れば、特撮技術の立ち遅れと停滞がはっきりしてしまった映画でもある
ガラパゴスだったのだ

そして本作以降の作品では進化どころか、退潮していくのだ
その意味で本作が東宝特撮のピークだったのかも知れない

あき240