「二人の強烈な個性が放つ、まぶしいばかりの化学反応! 伝説となったクラブでの諍いシーンは、日本映画史に残る名場面」疑惑 コタツみかんさんの映画レビュー(感想・評価)
二人の強烈な個性が放つ、まぶしいばかりの化学反応! 伝説となったクラブでの諍いシーンは、日本映画史に残る名場面
自分は「日本映画史上最強の化学反応」と勝手に思っているが、桃井かおりと岩下志麻という二人の強烈な個性がまさにバチバチと音を立て、激しい光を放ちながら物語をグイグイ引っ張っている。
怪演の桃井は、「アイツがやったに違いない」と日本中が確信する、前科4犯で夫に保険金をかけて殺した北陸一の毒婦・鬼塚球磨子。そして、彼女の弁護はしたくないと誰もが逃げ回る中で登場するのが、真っ白なブレザーで人を見下したような冷徹な目をした岩下演じる女弁護士だ。
人を食ったような球磨子が、顔を見るなり「あんたの顔きらいだなぁ」と言うと、「死刑になりたければ、断れば?」と眉一つ動かさない。この時の岩下の表情が、のちの『極道の妻たち』のあの役につながる、まさに氷のような美しさで、初対面シーンだけでもうゾクゾクしてくる。
本作は松本清張の原作で、これまでに何度もリメイクされているが、その名だたる女優が束になってかかっても、この2人にはかなわないのではないかと思うほど、2人の個性が作品にこれ以上ない魅力を与えている。いや、この2人にかかれば、松本清張のストーリーですらもただの背景となって後退し、かすんでしまう。
伝説となった最後のクラブでの2人の諍いシーンは、もう日本映画史に残る名場面であり、これを知らずして日本映画の何を語るのかというほどに何度みても圧倒される。
極めつけの、何かと話題になったらしい最後の二人の名女優の諍いのシーン、片や稀代の型破り破天荒なホステスかつ元社長夫人と冴えわたる切れ者女性弁護士。ふいに依頼主・元妻女クラブ経営者ホステスが赤ワインを女性弁護士の白ドレスに垂れかける。その前からの話の流れから類推すると、女弁護士が過剰に真実を追求しすぎて、車の水没事故が事故ではなく、意図的な夫社長の無理心中狙いの結果と判明した故に、妻依頼主が保険金を受領できなかった。元々、”3億保険金を手にできたらば5000万円を報酬払いする”との提案に乗ってこなかった、乗れば、運転事故扱い⇒3億保険金を受領できた、かも。それへのホステス上がりの元妻依頼者の不満の
意思表示だと思います。頭にきた女性弁護士が報復として、”いずれ夫社長を保険金の受領のため殺したか?”と逆襲質問。あいまい的ながら肯定的な返答。現実社会でも、場所、事案、金額からして当時も現在も起こり得そうなシーンだと思います。なお、松本清張氏がモデルとした1974年発生した保険金狙いの家族自動車水没殺人事件もかなりぶっ飛んだ事件らしいです。