鬼龍院花子の生涯のレビュー・感想・評価
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鬼政のように倫理観の薄い甘えた男は今でも日本の男性リーダーに多いのでは?
貧しい生まれから力でのし上がってきた荒くれ男の鬼政。彼はなにしろ自分の欲望に忠実です。家族も部下も力で抑えつけます。複数の妾を家に同居させ好き勝手。倫理観も欠如しています。
恩義のある権力者、須田(丹波哲郎)に電車のストの仲裁を頼まれた鬼政。スト指導者(田辺恭介:山本圭)にあんたは「飼い犬」だと喝破され、カッとなってタコ殴り。「怪我をさせるな」と指示されていたのに。でもその後なぜか仲良くなって「資本家を倒せ!」と息巻いて一緒に酒盛り。で、その男を花子(実の娘)の婿にしようと画策。花子じゃなくて松恵(血縁のない娘)をくれと言われカッとなっていきなり指詰め。さらに松恵の処女を自分が奪おうと襲いかかる。なにしろやることなすこと行き当たりばったりです。
須田に叱られたら一人で出かけていって土下座謝罪。それでも許されなかったら「今日をかぎりに鬼政、きっぱりと飼い犬の身分、返上いたしますきに!」と威勢よく啖呵を切ったあげくにノープラン。子分どもに「どんな汚い手を使ってもいいから、一人100円ずつ集めてこい!」とほざく始末。妻が重病にかかっても医者の指示に従わず入院もさせず。やることなすこと自分本位。自分はヤクザじゃなくて「侠客」であると口にする鬼政ですが、その生き様には品性の欠片もありません。
松恵と夫婦になった田辺恭介は義理の父となった鬼政を評して言います。「あの人には飾りがない、ひたむきで純粋だ、だから強い、だから強いんだ…」飾りがないというのはいいとしても、ひたむきで純粋というのはちょっとどうなのか。無理やり指詰めさせられた恨みは忘れたのか。もうわけがわかりません。松恵も松恵で、鬼政とサシ飲みで和解し、殴り込みに行く際には身支度の手伝い。無理やり犯されそうになった恐怖は忘れたのか。「なめたらいかんぜよ!」という松恵の決め台詞は、結局彼女の本質は鬼政であるということか。鬼政周囲の人間はみんなひどいことばかりされて来たのに、いつの間にか鬼政大好きになってしまう不思議。結局鬼政を裏切ったのは溺愛されていたはずの花子だけでした。
宮尾登美子の原作は未読ですが、本作の鬼政は自分の欲望に忠実で、すぐ暴力に訴え、短絡的で、あけっぴろげで、規範に縛られない、「どこか憎めない男」として描かれ、仲代達矢が大熱演しています。鬼政はまるで子どもがそのままおっさんになったかのような男です。多少周囲に無理を言ったり乱暴を働いたりしてもどうせ許してくれるだろう、泣き寝入りしてくれるだろうという、甘えの心理が透けて見えます。倫理観の薄い甘えた男鬼政の生き様を、本作はどこか肯定的に描いています。日本人は割とこのタイプの男性に好意的です。古いタイプの日本人男性リーダーには時々いるタイプです。今でもフジテレビなどに。しかし男の甘えほどみっともなく、はた迷惑なことはありません。鬼政も、客観的に見るとただの横暴な父親であり、無能なボスでしかありません。ニューヨークマフィアの男たちから見たら「やっぱり日本人は頭おかしいw」と言われそうです。ゴッドファーザー公開以降、すべてのボスたちはヴィトーと比べられる運命にあるわけであり、当然勝てるわけがありません。本作はゴッドファーザーから10年遅れた1982年の公開です。二人のボスを比べて見ました。
①生年:鬼龍院政五郎(通称・鬼政:仲代達矢)は1872年生まれ、ヴィトーより約二十歳年上になります。
②享年:鬼政は開戦直前の1939年に67歳で獄中死、ヴィトーは1955年に庭で病死、享年64。
③本拠地:鬼政の活動場所は高知、ヴィトーの本拠地はニューヨーク。
④家族構成:鬼政には義理の娘一人(松恵:夏目雅子)、実の娘(花子:高杉かほり)一人いますが、ヴィトーには三男一女があります。
⑤事業継承:鬼政は組織の存続に失敗し、一家は一代限りで消滅。一方ヴィトーは三男に跡目を継がせます。
⑥行動方針:鬼政は自分の欲望優先、家族も犠牲に。ヴィトーは信頼優先、家族を大事に。
鬼龍院政五郎の生涯
大正、昭和初期がそれ程昔ではないですが、TBSのドラマのあかんたれ...
大正、昭和初期がそれ程昔ではないですが、TBSのドラマのあかんたれも観てましたが、戦後もその奉公制度が養子縁組でその親方に奉公する制度があったのかなと思いましたが、ネットに学歴がない東北出身者が都心での稼ぎ所が男子が土木建築で女子が風俗とあり、若いうちにしかできないですが、何方も肉体労働ですが、また不景気だと客が来ませんが、日本の市民が優秀で読み書き算盤が江戸時代から皆できるが、その知能程度が江戸時代から皆、変わらないとしたならば、日本に原子力発電所があり、それが核の平和利用ですが、その核を核兵器に転用も可能と政治家がテレビで言ってましたが、あまり報道されないインドとパキスタンが核実験を同じ頃にもう行っていますが、核実験もその関係の頭脳がないとできないことですが
【”なめたらいかんぜよ!”土佐の侠客・鬼龍院政五郎と彼を取り巻く”はちきん”女たちの生き様と死に様をエロティシズム溢れる映像で描いた作品。迸る熱量がトンデモナイ作品でもある。】
ー ”はちきん”・・高地県に仕事で頻繁に行っていた時に、飲み屋街で教えて貰った言葉である。
意味は、(その後、キチンと調べた。)酒を呑んでばかりいる土佐の男を4人程度は首根っこを掴んで働かせる、男勝りの女性の事を言うそうである。
ウーム。”はちきん(意味分かりますね!2掛ける4は8ね!)の一人にはなりたくないなあ・・。-
■大正時代、土佐の大親分「鬼政」こと、鬼龍院政五郎(仲代達矢)の養女となった松恵(少女時代は仙道敦子。成人してからは夏目雅子)。
土佐電鉄の労働争議で知り合った高校教師・田辺(山本圭)に惚れ込んだ松五郎は、彼を自らが溺愛する実の娘・花子(高杉かほり)の婿にしようとするが、松恵と田辺がいつしか愛しあうようになり、政五郎は激昂し、二人は土佐を離れる。
◆感想
・この映画には、”はちきん”が多数描かれる。
1.政五郎の妻である歌(岩下志麻)
2.政五郎の妾であるつる(佳那晃子)
そして、松恵である。
だが、只一人、政五郎に振り回され、哀しき人生を歩み客死した女がいる。政五郎が溺愛する実の娘・花子である。
冒頭は、彼女が京都の遊郭で死んだ花子の急死するシーンから始まる。
・この映画は、松恵を演じた夏目雅子さんが、田辺の遺骨を貰いに行った際に激しく父親から拒絶された時に切った啖呵”なめたらいかんぜよ!”が有名であるが、冒頭から他の”はちきん”も頻繁に口にしている。
特に、歌を演じた岩下志麻さんの、臨とした着物姿の気品と、チフスの病に倒れてからの松恵に詫びる姿は、絶品の演技である。
・この映画の見所は、どうしようもない男だが、何処か憎めない政五郎を演じた仲代達矢の姿であり、彼を取り巻く”はちきん”女たちの生き様と死に様をエロティシズム溢れる映像で描いたところであろう。
<昔、チラリと見た時には(TVだったかな・・。)女優陣の裸ばかり取って、好きではないなと思っていたのだが、今観るとナカナカ気骨ある映画だなと思ったモノである。
だが、それはこの映画に主要人物として出演している全ての女優さんの気概が凄いからだと思うのである。
所詮、男なんてものは”はちきん”に振り回される生き物なのである。
そんな中、哀れに表現されるのが花子の生き様、死に様という点の対比も見事な作品であると思う。
タイトルが「鬼龍院花子の生涯」というのも、シニカルである。>
昭和の作品は重厚
五社英雄作品を初めて見ました。
大人になってから見たので、面白いと思いました。 表情や背中だけでも「心情の機微」が伝わるんですよね。昭和の監督と役者さんの演技(演出)は重厚だなぁと改めて実感。
子だくさんの貧乏な一家が子供を売る、養父が養女を襲う(鬼政なりの哲学と、結果未遂ではありましたが・・・・)、妾と一緒に生活するとか・・・・・時代なんですよね・・・・
この歳で初めてみて、ビックリしたのが「え???夏目雅子さんが鬼龍院花子ではなかった!」ですね。今見ても本当にお綺麗だし、素晴しい演技でした。
そして、この作品お実質的な主役は仲代達矢さんですね。
岩下志麻さんも迫力があったなぁ~~。
任侠の物語なので、鬼龍院一家に対する嫌な感情はなく、むしろ、人に惚れ自分の信念で時代を読み違えたことによる没落の悲哀が印象的でした。
今の日本にまるで無い義理と人情。
すげえ…
当時以来何十年かぶりに観た ストーリーはかなり忘れてたな とにかく...
“うちは高知の侠客鬼龍院政五郎の娘や…なめたら、なめたらあかんぜよ!”やはり夏目雅子のこの台詞に尽きるね!
①RIP夏目雅子、は当然として今回はRIP 山本圭。インテリでしっかり自分の考えを持っている如何にも好青年を演じさせたらピカ一の人であった。劇団出身で演技力もあったし。今の演劇界で似たような人はいないと思う。
②侠客の家に貰われて育ち、しかしその家業とは一番遠い場所に身を置いていた養女が実はそのスピリットを一番理解していたという物語。
③正に“五社英雄”ワールド。令和では取り上げそうにない(取り上げられない?)題材=近代日本(明治・大正・太平洋戦争前の昭和)の「堅気」でない世界で確かに生きていただろう男達と女達との織り成すドラマを、骨太にダイナミックに時には官能的に描く独特の映画世界(映画の出来には凸凹があるとはいえ)。濃いィ映画を久しぶりに堪能した感じ(ニンニクの沢山乗った鰹のタタキを腹一杯食べたみたいかな)。
④
山本圭さんを偲んで
山本圭
2022年3月31日
享年81
過去数回鑑賞
原作未読
監督は『丹下左膳 飛燕居合斬り』『北の蛍』『極道の妻たち』『吉原炎上』『肉体の門(1988)』の五社英雄
脚本は『野性の証明』『復活の日』『北の蛍』『極道の妻たち』『新・仁義なき戦い』『茶々 天涯の貴妃』の高田宏治
これほどタイトルと内容にギャップを感じる作品は他に浮かばない
鬼龍院花子を演じるのは夏目雅子ではない
演じたの無名の新人でこの作品以外記録はなくWikipediaにも項目はない謎の人物高杉かほり
美人でもなく強烈な個性もなく演技力がずば抜けてるわけでもない彼女の生涯の方に興味が出てくる
どういう経緯で抜擢されその後どうしているのかますます知りたくなった
オープニングクレジットで最初に出てくるのは仲代達矢だから彼が主役なのか?
語り部を兼ねた夏目雅子は2番めでダブル主演という形だろう
この作品で夏目はブルーリボン主演女優賞を獲得した
夏目雅子のヌードあり
夏木マリも佳那晃子もヌードになった
ヤクザの抗争と裸の女
典型的な五社英雄作品
高い教育は受けなかった政五郎演じる仲代達矢とヤクザに物怖じしない大学出の恭介演じる山本圭の口論が見どころのひとつ
この作品で個人的に一番好きシーン
侠客を自負する鬼龍院家の親分・鬼政こと政五郎に仲代達矢
のちに小学校の先生になる鬼龍院家の養女・松恵に夏目雅子(少女時代・仙道敦子)
子供が産めず妾の同居を容認している政五郎の妻・歌に岩下志麻
政五郎とつるの間に生まれたちょっとオツムが残念な花子に高杉かほり
末長の下女として働いていたが政五郎に強奪され妾になったつるに佳那晃子
政五郎の妾・牡丹に中村晃子
政五郎の妾・笑若に新藤恵美
政五郎の子分のまとめ役・相良に室田日出男
闘犬育成から転向した政五郎の子分・兼松に夏八木勲
兼松の子分・六蔵に佐藤金造
政五郎の子分・丁次にアゴ勇
政五郎の子分・精に益岡徹
政五郎の子分・熊に古今亭朝次
高知商業の教師で土佐電鉄労働組合を支援する活動家でのちに松恵の夫になる田辺恭介に山本圭
土佐電鉄労働組合委員長近藤に役所広司
関西を拠点とする山根組組長山根勝に梅宮辰夫
花子と結婚を前提に付き合い始めた山根組組員権藤哲男に誠直也
鬼龍院家と山根組を引き合わせ兄弟の契りを交わすことに尽力した仲人役辻原徳平に成田三樹夫
加藤医師に浜田寅彦
龍松一家の刺客に福本清三
末長組の組長・末長平蔵に内田良平
平蔵の妻・秋尾に夏木マリ
平蔵の兄弟分三日月次郎に綿引勝彦
土佐電鉄筆頭株主・須田宇市に丹波哲郎
夏目雅子と望遠レンズが見所
たぶんすごく長い原作の映画化かなと思うけど、ギュッと凝縮した割には面白くない。仲代達矢の主人公が馬鹿すぎる。ヤクザの親分がこんな馬鹿なわけがない。どういうところで求心力があって子分達がついてくるのかさっぱり分からない。最初は洞察力を持ってるところが示されていて期待出来る部分があったのでそこそこ面白かった。しかし途中からただの暴力的な馬鹿な親父に成り下がった。大親分と喧嘩してその後どうやって稼いだのか分かんないし。労働者の気持ちが分かってその後どういう行動を取ったのかも描かれていない。伝わってくるもの全てに深みを感じなかった。 原作エピソードの取捨選択が間違っていて監督としての実力を疑う。
夏目雅子は良かった。日本映画最高の女優を美しく望遠で撮った映画が残ったということだけが褒められる。
仲代達矢さんがかっこよかった
佳那晃子のおっぱいがいい
宮尾登美子原作、重い(笑)主演は夏目雅子、本人懇願の結果らしい。 ...
五社監督の本気
自粛生活の連休中にYoutubeで町山智浩さんと春日太一さんの映画塾を聞いて、観たくなり、アマプラで観ました。
いままで、成人したころに何度か観たころはあります(エロ目的で)。
20-30歳台に観たときは夏目雅子の美しさしか頭に入りませんでしたが、今回、久々に観たところ、とにかく役者全員の凄さ、特に仲代達也さんの色っぽさ+可愛さ(男なのに)な演技、やはり夏目雅子の美しさ+演技の上手さ、岩下志麻さんの強さ+色っぽさ+狂気な演技そして仙道敦子の完璧な子役演技などなど、すべて役者の演技が最高です。
なぜ、公開当時はエロを全面に出したのだろう?
松恵(夏目雅子)の決め台詞は数回リピートしてしまいました。
傑作です。
役者、百花繚乱
原作は、鬼政~花子までの盛衰記を、松恵が語るというものらしい(Wikiより)。
原作未読。
映画は、五社監督が撮りたい場面をつなげたように見える。
それだけに、シーンごとの迫力は満点。
話を繋ぎ合わせると、あれ?矛盾…と思う部分もあるが、映像化されていない年月の中での心境の変化かな?とかってに想像する。
仲代氏が圧巻。
鬼政の強さ、弱さ、かわいらしさ、虚しさを余すことなく演じ切っている。
侠客になりたかったのに、なり切れなかった男。
非識字者なのか?生い立ち的には十分にあり得る。そのあたりをなんとなくごまかしているところが、またかわいい。
その分、熟考するというよりも、思い切りの良さ、思い込みでつっぱっして行ってしまうパワーがすごく、かつ人たらし。
一番信頼を寄せていた妻との別れがなんとも…。弱さを見せる。
一番大切にしていた娘からの仕打ち。人生の虚しさを感じる時。
岩下さんの冷・静・品 VS 夏木マリさんの熱・動・俗。
夏木さんとの対比で、岩下さんが際立つ。
ちょっとした表情ですべてを語る岩下さん。死に際の、鬼政へのたぎる想い。美しすぎる。
夏目さんの、要所・要所の表情。岩下さんとは違う美しさ。瞳の奥の悲しさ・寂しさ。
室田氏演じる相良:おっちゃんとのやりとりが温かい。
仙道さんの目力。ちょっと困ったような表情。怒りをおびた悲しい目。
丹波氏の御大さ。
その役者たちを際立たせる調度類。黒光りする家屋。何百年物の屋敷を借り切ってのロケと思っていたらセットだそうだ。光との、影とのコンビネーションに引き込まれる。
こんな世界に生きる人々を、これでもかというほど格好よく描いているのに、死に際はリアルで格好良くない。監督の哲学?
定評ある役者の、それまで見慣れた側面以外の魅力を最大限に引き出された映画。
一見の価値あり。
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