「役者、百花繚乱」鬼龍院花子の生涯 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
役者、百花繚乱
原作は、鬼政~花子までの盛衰記を、松恵が語るというものらしい(Wikiより)。
原作未読。
映画は、五社監督が撮りたい場面をつなげたように見える。
それだけに、シーンごとの迫力は満点。
話を繋ぎ合わせると、あれ?矛盾…と思う部分もあるが、映像化されていない年月の中での心境の変化かな?とかってに想像する。
仲代氏が圧巻。
鬼政の強さ、弱さ、かわいらしさ、虚しさを余すことなく演じ切っている。
侠客になりたかったのに、なり切れなかった男。
非識字者なのか?生い立ち的には十分にあり得る。そのあたりをなんとなくごまかしているところが、またかわいい。
その分、熟考するというよりも、思い切りの良さ、思い込みでつっぱっして行ってしまうパワーがすごく、かつ人たらし。
一番信頼を寄せていた妻との別れがなんとも…。弱さを見せる。
一番大切にしていた娘からの仕打ち。人生の虚しさを感じる時。
岩下さんの冷・静・品 VS 夏木マリさんの熱・動・俗。
夏木さんとの対比で、岩下さんが際立つ。
ちょっとした表情ですべてを語る岩下さん。死に際の、鬼政へのたぎる想い。美しすぎる。
夏目さんの、要所・要所の表情。岩下さんとは違う美しさ。瞳の奥の悲しさ・寂しさ。
室田氏演じる相良:おっちゃんとのやりとりが温かい。
仙道さんの目力。ちょっと困ったような表情。怒りをおびた悲しい目。
丹波氏の御大さ。
その役者たちを際立たせる調度類。黒光りする家屋。何百年物の屋敷を借り切ってのロケと思っていたらセットだそうだ。光との、影とのコンビネーションに引き込まれる。
こんな世界に生きる人々を、これでもかというほど格好よく描いているのに、死に際はリアルで格好良くない。監督の哲学?
定評ある役者の、それまで見慣れた側面以外の魅力を最大限に引き出された映画。
一見の価値あり。