「夏目雅子♪」魚影の群れ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
夏目雅子♪
町を捨て、簡単に漁師になると言われたことに無性に腹が立った房次郎は俊一を殴る。結婚したいという男として殴ったのではないのだろう。子どもの頃からいつの間にか漁師になってたというほど、漁師一本の海の男なのだ。トキ子は「漁師になってもマグロのことしか考えないのではだめだ」と言う。無視され続けた俊一だったが、粘りに粘って何とか房次郎の船(第三登喜丸)に乗り込む。何度目かの漁に出たとき、マグロの群れに遭遇。房次郎はかかったマグロを引き揚げようとするが、釣り糸が俊一の頭に巻きつき、血だらけとなった。無線で港に救急車を手配するものの、あきらめたマグロがまたもやかかった。房次郎はマグロと死闘して、何とか釣り上げる。が、手当てが遅れたため、俊一は病院で生死をさまよった・・・
1年後、房次郎は津軽から北海道へと足を延ばし、しばらく伊布港に留まる。そこで20年前に別れたアヤ(十朱)と再会。一旦は寄りを戻すが、今の男に絡まれる。北海道で続けた漁において、何度も釣り糸を切られたショックで引退を考える。大間港に戻った房次郎は、家を出て行ったトキ子と俊一に再会。しかし、事件後にほぼ絶縁状態となっていた・・・
俊一は店を売って漁船を購入していた。トキ子の妊娠も父親には告げずにいたが、彼は漁師たちの仲間に入れない孤独を感じていた。ある日、漁に出た俊一が行方不明となり、トキ子は房次郎に助けを求める。房次郎は長年の勘によって俊一の第一登喜丸を発見。俊一は三百キロ近い大物と格闘中だった。重傷を負った俊一を見た房次郎は糸を切ろうとするが、「切らねでけろ。俺も大間の漁師だから」と断った。そして大物を仕留めて寄港する途中、俊一は死んでしまう・・・
マグロとの格闘はかなりリアル。津軽弁はよくわからなかったが真に迫る演技には圧倒される。相米の長回しは『ションベンライダー』に見られるような技巧的な長回しというよりは、心情を伝えるための必然性を感じるもの。男の生き甲斐と妻への愛情・・・天秤にかけられるものじゃないのに、マグロ漁に生きる過酷な人生をも感じさせるのだ。かつて漁師だったエイスケ(三遊亭円楽)もその一人。テグスに挟まれ、足の骨と筋肉がグチャグチャになってしまったと語るところに哀愁さえ漂う。俊一が死んでしまい映画は終わるが、もう一度、冒頭の漁師になる前のシーンを見てみると、物語を反芻させるくらい重い未来を予言しているようだ・・・この冒頭のシーンをそのままラストにもってきてもいいくらい!