昨日消えた男(1941)のレビュー・感想・評価
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貧乏長屋で起こった連続殺人に遊び人のスチャラカ男推理が冴え渡る... 銀幕スター男女の若き姿のじゃれ合いに目を奪われつつ,渦中の事件は時代劇のデウスエクスマキナに瞬く間に裁かれる痛快娯楽映画
時代的に太平洋戦争に突入しようという戦中末期で、その時期に公開された映画というと戦意高揚映画や忠君忠孝の精神を元とした剣戟映画ばかりかと予断してしまいますが本作についてはそうした息苦しさはどこへやら、貧乏長屋で暮らす町人たちの痴話喧嘩や胸算用、若い男女の初心な意地の張り合いにその長屋で起こった連続殺人が騒ぎをもたらしそして…というハイブリッドな時代劇娯楽作に仕上がっております。
"ぜいたくは敵だ!"の精神の折、よくこれだけの明るく楽しい作風が当時の内務省による検閲をクリアしたなという驚きがまずもって作品評価を上げてしまいますが、上記の下町人情に加え、本作からほぼ一世紀を経てもなおその名を広く知られている日本を代表する名探偵の多分にご都合主義的ながらも小気味のいい名推理と偉大なるマンネリを敷衍させる大団円が待ち構えており、日本人の琴線に触れる超王道のドラマツルギーという感じがします。
実は事件を調べていた公権力側に犯人が居た、ということでよりフェアな情報提示や互いの駆け引きを描けばもっと重厚な作品に成り得たでしょうが、日本の名探偵にして時代劇キャラの金字塔というジョーカーを持ち出したことでかなりの程度の超展開が許され、そこで稼いだ尺で下町人情とラブコメ描写を盛り込んだことで結果的に先進的な複合ジャンルに跨いだエンタメ傑作に仕上がった、ともいえると思いました。
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