キネマの天地のレビュー・感想・評価
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女優としての成長物語
大船撮影所50周年記念作品。脚本は山田洋次、井上ひさし、山田太一、朝間義隆。女優になりたい女性はいっぱいいるが、女優にしたい女性は少ないという小倉監督に見出された小春だったが、最初に看護婦役をたまたまやらされ失敗。島田(中井)の説得により大部屋に入ったが、「いらっしゃいませ」の一言の台詞でもOKが出ずに苦労する。
島田は思想犯として特高に追われている先輩の小田切(平田満)を匿ったために捕まってしまうが、「こいつマルクスなんぞ読んでるぞ」などと言われて開いた本がマルクス兄弟だったのには笑った。この頃は活動屋をやってるだけで軟弱者としてしょっ引かれていたんだと思うと、日本が情けなくなる。
基本線は女優としての成長物語と、生きる勇気を与えるような映画を撮りたいと夢見る脚本家の物語。撮影所以外の小春の家族の周りが『男はつらいよ』で固められているとこが山田組らしところ。その旅芸人であった父親の渥美清が娘の主演第一作「浮雲」を観ながら死んでしまう。自分の生い立ちを知りクライマックスの演技にも磨きがかかって完成した作品。出来すぎのストーリーではあるが、なんとも哀愁に満ちたところだ。
松竹の看板女優であるという設定の松坂慶子が駆け落ちしたおかげで主役の座を射止め、祝賀会で「キネマの天地」を歌うところも『蒲田行進曲』との絡みを考えると面白い。
もうないか?まだあった。山田洋次監督作品。 前半はやや冗長だが、昔...
映画産業黎明期の内幕を覗き見る
総合70点 ( ストーリー:65点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
威厳を振りかざす監督、理想を持つ助監督、興行収入を気にする管理職、銀幕でしか見たことがなかった俳優たち、政府の映画界への干渉。そんな当時の映画産業の内幕を、映画産業に女優として入った売り子の若い娘を通して豪華出演者たちで人情を絡めて広く浅く描く。
渥美清の迎える唐突な結末には疑問符がつくしちょっと説明的な部分やわざとらしい演出もあったが、映画作りの裏側を描くという意味で類似性のある作品の「蒲田行進曲」よりはずっと自然でより普通に観られた。自分は特にこの時代の映画作りに興味があるわけではないが、懐古的な映画産業への愛情が感じられる作品だった。
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