「憂う者たちの“TOKYO WAR”」機動警察パトレイバー2 the Movie しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
憂う者たちの“TOKYO WAR”
「機動警察パトレイバー」劇場版シリーズ第2作。
DVDで鑑賞。
マンガ版は既読、OVAとテレビシリーズは未見です。
憂国のテロリストが仕掛ける東京での仮想戦争―。重厚なリアリズム演出が光り、押井守監督が「機動警察パトレイバー」で本当に描きたかったのはこれなのかもしれないと納得させられるような、骨太ポリティカル・サスペンスでした。
パトレイバーがクライマックスにならないと本格的に登場しないので、ロボット・アクションが好きな方は、もしかすると「物足りないなぁ…」と思われるかもしれません。
作画が第1作よりも劇画的になったことで、作品のリアリティーに一役買っているように思いました。戦車などの兵器群の描き込みもリアルで、本物感が満載でした。
二・二六事件を彷彿とさせるような雪景色と戒厳の風景が眼前に展開されている中、日常生活が変わらず営まれていると云う不気味さが、画面からひしひしと伝わって来ました。
仮初めの平和を、何も考えずにのうのうと享受している日本国民に対し、東京に戦争状態を現出させ、果たして戦争とはどう云うものなのかを容赦無く提示してみせました。
平和と戦争は紙一重、危うい均衡が辛うじて保たれているだけであり、ちょっとしたきっかけで容易く箍が外れてしまうことを知らしめるために、今回のテロを決行した…。
首謀者・柘植行人の思想には、押井監督の憂いが籠められているのかもしれないな、と思いました。
※リライト(2021/02/14)
※鑑賞記録
2021/02/14:DVD(サウンドリニューアル版)
OVA3巻5〜6話の『二課の一番長い日』は、Movie1と2の雛形で、ポリティカルドラマの傑作なので、よかったらみてみてほしいですよ。
合わせてたった1時間なので、ぜひぜひ。